「世界の一人でも多くの人々に健康をお届けする」「一人ひとりに合わせた『新しい価値』をお客さまへ提供する」「人と地球の共生社会を実現する」を目標とした、ヘルスケアカンパニーへの進化のためには、日々の研究開発による新しい価値創造が重要です。ヤクルトのイノベーションについてご説明します。
ヤクルトの創始者で医学博士の代田 稔は、病気にかかってから治療するという治療医学が主流の時代に、病気にかからないようにする「予防医学」という新しい視点で人々の健康の実現を目指し、微生物のもつ力に着目して研究の道に入りました。そこで、乳酸菌が腸内の悪い菌を抑えることを発見し、それを強化培養することにより、生きたまま腸に到達できるようにしました。それが、ヤクルトのイノベーションの原点「乳酸菌 シロタ株」です。
代田は、栄養素を摂る腸を丈夫にすることが健康で長生きすることにつながる「健腸長寿」、「誰もが手に入れられる価格で」を提唱し、腸を守る「乳酸菌 シロタ株」を一人でも多くの人に、手軽に飲んでもらいたいと考えました。これが、乳酸菌飲料「ヤクルト」の開発につながったのです。
現代においても、代田の精神を受け継ぎ、乳酸菌の新たな研究成果を商品開発につなげ、世界の人々の健康に寄与する商品を創出しています。
近年、世界の研究分野では、脳と腸が互いに影響し合う「脳腸相関」に、腸内細菌を加えて「脳-腸-微生物相関」の研究が進展しています。ヤクルトでも研究を進め、高密度、高菌数の「乳酸菌 シロタ株」を含む乳酸菌飲料の継続飲用が、一時的な精神的ストレス状況下において、ストレス緩和や睡眠の質を高めることを健常な医学部生で確認しました。
高密度・高菌数の乳酸菌飲料の商品化を実現するために、培養方法を新たに開発し、「乳酸菌 シロタ株」の増殖と製品保存中の菌数維持に最適な処方・培養条件を確立し、ヤクルト史上最高密度を実現しました。高密度の機能を保持したまま、「ヤクルト」らしい風味を維持しています。研究・開発担当の熱い想いがこもった「Yakult(ヤクルト)1000」は、2021年4月に全国発売されました。
ストレス社会といわれる現代は、メンタルヘルスケアが重要視されています。ヤクルトでは長年培ってきた研究や技術を活かし、社会課題の解決に貢献する新しい価値を今後も提供していきます。
酒井:ヤクルトは、世界の人々の健康に貢献したいという想いを胸に、健康に関わる社会課題の解決を目指してきました。
太田:
創始者で医学博士の代田 稔は、感染症で命を落とす子どもを救うため「予防医学」を実践しましたが、まさにそれは、社会課題解決のためのイノベーションだったと思います。
そのベンチャースピリットを我々は受け継ぎ、さまざまなユーザーの多様化するニーズに応えるため、日々の研究、商品の企画・開発に努めています。
酒井:中央研究所は、乳酸菌などの微生物の研究を中心に基礎研究・応用研究を進めており、ヤクルトの製品・サービスのシーズを創り出すのが大きな役割です。
太田:研究所の研究成果を基にした商品開発や、容器包装等の技術開発、新素材の開発を行うのが開発部です。
西川:企画室では、ヤクルトのイノベーションのため、新たなサービスや新規事業化に向けた試みを実施しています。その中でメディカルバイオームグループでは、メディカル分野での社会課題解決に向けた新商品の企画立案や販路構築を行い、必要に応じて関係部署と連携し、ヤクルトの新しい価値を創り出す活動を行っています。
太田:お客さまの視点に立って、社会の役に立つ新しい価値を創造していくためには、部署横断の連携が今後ますます重要だと考えています。
太田:ヤクルトの将来を考えたとき、企業の持続可能性を高めるためには、限りある資源を有効活用し、地球環境、動物への影響を最小限にしながら「人と地球の共生社会」を実現する事業活動が重要になると考えました。当社製品の原材料は、主に乳や植物に由来する自然資源を利用しています。環境保全や生物多様性への配慮と合わせて、新しい素材を探求する中で着目したのが植物由来の素材でした。
酒井:グァバ葉のポリフェノールを活かした「ヤクルト蕃爽麗茶」、豆乳を乳酸菌で発酵させて大豆イソフラボンを吸収しやすくした「ヤクルトのはっ酵豆乳」を商品化するなど、植物由来の素材については、今までも研究してきたベースがあります。それをより発展させて、環境問題への対応も含めた新しい価値の創出につなげていきたいと考えています。
太田:植物由来の素材と乳酸菌の融合により、新しい価値を生み出すことは、将来のヤクルトの事業にとって必要であり、新たなファンづくりにもつながるものと確信しています。そして、ひいては、世界中の人々の共通の願いである「健康」を提供するという社会課題の解決にも寄与できると考えています。
西川:私が日々接している医療現場の先生方からは、高齢化にともなう医療費増大、抗生剤多用による耐性菌の問題などが聞こえてきます。そのような課題に対し、当社のリソースを活用した栄養補助食品で、貢献できることがあるのではないかと考えています。
酒井:中央研究所では、以前から共生菌と疾病との関連の研究を行っていました。それらの研究成果を医療現場の課題解決につなげていくことにより、新しい事業へと大きく発展していくものと期待しています。
西川:現在我々が扱っているのは食品ですので、副作用の心配がないのは利点です。医療関係者も患者さんへ安心してお勧めできますし、患者さんの治療のサポートとして役に立てるのではないかと考えています。今までのヤクルト製品のマーケットに加え、新たなメディカルケア&ニュートリション分野でも製品ラインアップを増やし期待に応えていきたいと思います。