ヤクルトグループの事業活動にとって、水は重要な存在です。製品そのものの原料となるばかりでなく、穀物飼料をはじめ、ヤクルトの多様な製品を支えるさまざまな作物に欠かせません。このため、工場、オフィス、販売会社は水の有効利用と排水の水質管理、水資源の保全に取り組んでいます。
排水設備の処理水を芝生の散水に使用(タイヤクルト)
純水の製造装置を点検(ヤクルト本社 福島工場)
株式会社ヤクルト本社 福島工場では、水道水と純水を使用して製品の生産を行っています。純水は、専用の装置で水道水から不純物を取り除き、純度を高めます。その過程で不純物を含む濃縮水が多量に発生する(1日約9m3)ため、工場内の排水処理場で処理を行い、下水道に放流していました。
この濃縮水は、飲用や製造過程での使用には適さないものの、工業用水の水質基準は満たしていることから、別の用途に利用できるのではないかと検討を始めました。いろいろなテストの結果、製品や機械の冷却用水として再利用することが可能となり、水道水使用量と下水道放流水の大幅な削減を図ることができました。
2016年度の実績として、前年度より2,472m3の水道水使用量と下水道放流水を削減することができました。
株式会社岩手ヤクルト工場の圧縮空気設備および各種冷凍設備は水冷式のため、冷却水の管理は特に重要です。これまでも冷却水配管内にスケール※が発生しないように、薬品を投入して管理してきました。2016年度は、スケール付着防止効果がより高い薬品に変更しました。その結果、冷却水の濃縮を防ぐために使用する水の量を減らすことができました。
2016年度の実績として、前年度より2,702m3の水使用量を削減することができました。
※ スケール:水中に含まれる無機塩類が配管内に付着したもの
バンコク市内では、地下水くみ上げによる地盤沈下が懸念されています。そこでタイヤクルト株式会社のバンコク工場とアユタヤ工場では、地下水のくみ上げ量の削減や環境に配慮した対策として、排水設備の処理水をマイクロフィルターによって浄化し、工場内で有効利用しています。バンコク工場ではトイレ用水やパレット・輸送車・排水設備の洗浄に、アユタヤ工場ではトイレ用水や花壇・芝生への散水に使用しています。2016年度は、バンコク工場が10,269m3、アユタヤ工場では78,007m3の水を再利用することができました。
発想を転換し、濃縮水を再利用することで水使用量の削減につなげることができました。固定概念を疑い、新たな視点で改善することの重要性をあらためて認識することができました。今後も水資源の保全に向けて、“もったいない”という気持ちでさらなる改善に取り組んでいきたいと思います。
岩手ヤクルト工場は、生産開始から10年が経ち、各設備の老朽化が目立ち始める時期にきています。今回の冷却水への新しい薬品導入は、水使用量の削減効果が非常に大きく、コストも低減できました。また、内容成分はすべて自然界に存在している無機物で構成されており、より人体や環境にやさしいものになるなど、さまざまな面で実のある活動であったと考えています。今後も、このような効果のある取り組みを実践していきます。
本店における2016年度の水使用量は22,559m3で、そのうちトイレ・給湯室の割合が半分以上を占めています。そこで、水使用量の削減のために、一部フロアでのテスト導入を経て、2017年3月より各フロアのトイレおよび給湯室の混合水栓の約50か所に節水器具を取り付けました。導入後の節水効果は、年間約600m3の削減が予想されており、500mlペットボトルに換算すると120万本分に相当します。
センターで冷凍した蓄冷剤をお届けボックス(ヤクルトレディが宅配で活用する商品ケース)に敷き詰め、商品を保冷
東京ヤクルト販売株式会社は2007年度にISO14001(環境マネジメントシステム)の認証を取得し、「水の使用量削減」を環境目標の一つに掲げています。
ヤクルトレディによる宅配では、商品を保冷するために氷を使用していましたが、東京ヤクルト販売では2009年度に氷の代替品として蓄冷剤を一部で導入し、導入前と比較して水使用量が年平均2,568m3削減されています。
東京ヤクルト販売では、従事者一人ひとりに「節約=環境保全」の意識が浸透しています。蓄冷剤を導入することで、水使用量を大幅に削減できただけでなく、省スペース化によりヤクルトレディの作業効率改善にもつながりました。現在は、氷と蓄冷剤を併用しており、お届け後に使用済みとなった氷はセンターで解凍し、清掃用水としてセンターやその周辺にて再利用しています。今後も地域の皆さまとのつながりを大切に、環境保全の輪を広げていきます。