中央研究所は、「代田イズム」を基盤にさまざまな研究に取り組み、その成果を、予防医学や健康維持のための食品、医薬品、化粧品へと応用してきました。2016年4月には、コア技術の進化や連携を図るための設備・組織・環境を整備した、新たな中央研究所が誕生しました。世界の人々の健康のために、腸内フローラやプロバイオティクスのコア技術を幅広い分野に展開していきます。
中央研究所
ヤクルトの原点「代田イズム」をたどる代田記念館
私たちのおなかの中には、およそ千種類、約百兆個もの腸内細菌がすみついていて、その重さは1kgにもなります。特に小腸下部から大腸にかけては、多種多様な腸内細菌が生息しており、その様子を花畑にたとえて腸内フローラ(腸内細菌叢)と呼んでいます。腸内フローラは、腸の健康や免疫の発達維持だけでなく、生活習慣病やストレスなどとも関連があることがわかってきました。
ヤクルト中央研究所では、予防医学の見地から、腸内フローラの研究を活動の柱としています。独自に開発した腸内フローラ解析システム「YIF-SCAN®」(イフスキャン)を駆使して、2,000人を超える日本人の腸内細菌群の統合データベースを構築したほか、アジアのさまざまな都市の住民の腸内細菌叢の差異や、疾病における腸内細菌叢の異常についての研究も進めています。今後も腸内細菌の機能解析などに注力し、世界の人々の健康維持・増進に貢献していきます。
腸内フローラ解析システム「YIF-SCAN®」
プロバイオティクス※とは、腸内フローラのバランスを改善することにより人に有益な作用をもたらす生きた微生物のことです。その代表的なものに、小腸で働く乳酸菌や大腸で働くビフィズス菌があります。代田 稔が発見した「乳酸菌シロタ株(ラクトバチルス カゼイ シロタ株)」や「ビフィズス菌 BY株(ビフィドバクテリウム ブレーベ ヤクルト株)」を使った研究は、プロバイオティクス分野で常に世界をリードしてきました。
※生物間の共生関係を意味するprobiosisが語源です。
乳酸菌やビフィズス菌などの微生物コレクション
ヤクルトがお届けしている食品、医薬品、化粧品は、お客さまが直接口にされたり、肌につけたりされるものです。中央研究所では、安全・安心に関する研究や保証を専門に行う研究・保証機関を設けています。「安全性研究所」では、すべての素材・製品の安全性を評価し、信頼性確保のための研究を行っています。
「分析試験研究所」では、自社の測定技術を用いて、安全・安心の保証と研究のサポートを行っています。また、「信頼性保証室」は、製品開発における安全性・有効性に関する試験データの信頼性を第三者的な視点から保証する役割を担っています。
病理組織診断
東京都国立市の緑と清流溢れる豊かな自然環境の中に位置する中央研究所は、太陽光パネルの設置や周辺への遊歩道の配置、クリーン運動や災害時における飲料水の供給など、環境や地域との共生に向けた活動を行っています。
国立市からの感謝状
周辺に遊歩道を配置
クリーン運動
国際学術課は、海外事業の拡大に対応すべく、新たに設立された部署です。私は、ヤクルトの海外事業の発展と安全な操業を学術的側面から支援する仕事をしています。近年、プロバイオティクスや腸内細菌の研究が世界各国で急速に加速していますが、当社独自の海外事業ネットワークを生かしたグローバルな研究戦略を推進します。
信頼性保証室では、素材や製品の安全性・有効性に関する試験について信頼性を保証する業務を行っています。新しい研究所では客観性を高めるために独立した部署となりましたので、その責務に応えられるよう、常に厳しい目を持って業務に取り組みたいと思います。また、研究活動と研究データのさらなる信頼性向上をめざして、今後は啓発活動にも積極的に取り組んでいきます。