水は、私たちの暮らしを支えるかけがえのない資源の一つです。ヤクルトでは、商品の原材料として水を使用しており、工場の設備の洗浄や冷却、殺菌のためにも水は欠かせません。
ヤクルトの水使用の全体像や、国内外で取り組んでいる水資源の保全活動をご紹介します。
現在、世界では人口増加や経済発展により、水使用量は増加の一途をたどっています。また、深刻化する気候変動(地球温暖化)は水資源とも密接につながっており、地域的な降水量の変化や洪水・干ばつなどの異常気象をもたらします。
世界資源研究所(WRI)が公開する、世界各地の水リスクを示したマップ「Aqueduct Water Risk Atlas」では、水リスクの高い国として以下の17か国が特定されており、その中にはヤクルトが生産や販売を行っている国もあります。
ヤクルトは、各生産拠点の近隣河川や生態系への影響、水災などの水リスクを知る必要があると考え、2017年から外部機関による調査を進めています。2020年3月には、WRIが開発した水リスク評価ツールAqueductを用いて全生産拠点を調査しました。(下表)
調査結果をベースに各生産拠点の実態把握を進め、生産活動の見直しや方針策定に反映させていきます。
ヤクルトの生産拠点では、水資源保全のためにさまざまな取り組みを行っていますが、主なポイントは以下の2つです。
グローバルで水使用量の削減と排水の適正管理を推進しています。
ヤクルト類等のアルミキャップを閉じる工程で使用する装置は、熱をもちやすいため通水で冷却しており、一定の水を使用せざるを得ませんでした。そこで、2019年度は冷却に使う水を循環できる設備を導入して、水使用量の削減を図っています。
また、一部工場では空調設備の室外機を散水することで冷却していますが、2019年度は、この散水量や散水時間、ノズル形状を見直し、運転効率を維持したまま水使用量を削減しました。
工場が河川等周辺の自然環境に与える影響を認識し、河川に輸送車両から漏れた油類が流出する等の不測の事態にも備えるために、緊急時対応の教育訓練を年に1回以上実施し、体制強化や意識向上を図っています。
全工場において、法規制よりも厳しい自主基準を定め排水管理を行っています。
排水は、各工場の排水処理施設や、ヤクルト容器に棲みつく微生物の力を利用した「A&G水浄化システム」で適正に処理した後、下水道や河川に放流しています。
メキシコヤクルトのグアダラハラ工場では、乳製品の均質化を行う設備の冷却方法を見直したところ、2018年度の水使用量は前年の半分以下の1,464㎥ 減となり、大幅に削減することができました。
イスタパルカ工場では、排水処理水を工場の緑地への散水に再利用して、水使用量の削減を図っています。2019年度は月平均775㎥ 、年間合計9,300㎥ を散水しました。
ブラジルヤクルト ロレーナ工場では、第三工場と福利厚生場の排水処理水を水洗トイレへ再利用する工事を進めています。これにより水使用量の大幅な削減を見込んでいます。
各生産拠点では、説明会などの機会を通じて地域の皆さまに排水管理の状況などをご説明しており、地域住民の皆さまと密なコミュニケーションを図っています。天災時に地域の皆さまのお役に立てるよう備えている生産拠点もあります。
例として、フィリピンヤクルトのカランバ工場では、上水道異常発生時に工場用水を無償で地域の皆さまに生活用水として提供する仕組みを整えています。上水道設備の不備が多く、断水・濁水がしばしば発生するこの地域において、地域の皆さまの安全・安心な生活に貢献しています。