1日常では気づきにくい動作の変化がエイジングのサイン
最近、階段を駆け上るのが辛くなった、夜更かしすると翌日に疲れが残る、歩くのが遅くなった…、意識しなければわからないほどわずかですが、私たちの体は日々、変化し、老化しています。定期健診などで変化を指摘されない限り、はっきりと体の注意信号を受け取ることはできません。そこでチェックしたいのが、柔軟性です。子どもたちは、大人よりも筋肉が少ないものの、柔軟性があるので、疲れにくく、疲れてもすぐに回復します。さらにケガをしにくく、腰痛や関節痛にもなりにくいのは、重心を上手くとってバランスを保つことができるからです。ところが、年齢とともにこの柔軟性は衰えていきます。
前屈での測定は、多くの人が学校の体力測定で行った経験があると思いますが、柔軟性の目安になります。床に足を伸ばして座り、つま先に手を伸ばし、前屈してみましょう。いかがでしょうか。昔に比べて、つま先に手が届きにくくなっていませんか?
(注)図は、3点移動平均法を用いて平滑化してある。
出典 「平成28年度体力・運動能力調査結果」(スポーツ庁)
http://www.mext.go.jp/sports/b_menu/toukei/chousa04/tairyoku/kekka/k_detail/1396900.htm
2インナーマッスルの状態を表わす股関節の柔らかさ
前屈をした時に、膝の裏や腰まわりが「イタタっ」となる人は、まさにエイジングが進行しているサインかもしれません。関節やインナーマッスルが硬くなって、上手く働かなくなっている恐れがあります。
全身の中でも、とくに着目したいのが股関節の柔軟性です。老いは股関節からやってくる、といわれるほど、股関節は人体にとって最大かつ重要な関節です。体重を支え、立つ、座る、歩くといった多くの基本動作のすべてに重要な役割を果たしています。また、股関節は、大腰筋、腸骨筋、内転筋群などの大切なインナーマッスルを含む20以上の筋肉に支えられているので、股関節の動きの良し悪しは、体内の筋肉の状態を表します。これらの筋肉が硬くなると、股関節の動く範囲が小さくなり、急に動かそうとしたときの痛みになるわけです。さらに、体の重心がとりにくくなるので、腰痛が起こりやすく、その腰を庇うことで肩こりや膝痛が出る場合もあります。血行も悪くなるので、代謝の遅れにつながります。
逆に股関節まわりの筋肉を柔軟に保つことができれば、さまざまなメリットがあります。
<股関節まわりを柔らかくするメリット>
- バランスよく、足早に歩けるようになる
- 骨盤のゆがみがとれ、代謝が良くなる
- 太りにくく、痩せやすい体質に
- 血流が良くなり、免疫力がアップ
- 肩こりや腰痛、ひざ痛などが緩和
- 疲れにくく、疲れが残りにくくなる
- 冷え症やむくみが緩和
- 運動のパフォーマンスが上がる
いかがですか?まさに全身若返りともいえるメリットです。ぜひ、日頃から股関節の状態に注意を払っておきたいものです。
3股関節の若さを最大限にキープするセルフケア
デスクワークやスマホ・タブレットの使用で、椅子に座る時間が長くなりがちな現代人の生活は、股関節にとっては非常に良くありません。同じ姿勢で座っていると一部の筋肉だけが緊張し、他が使われなくなってしまうため、酷使した筋肉、使われない筋肉がともに硬くなりがちです。本来は、立ったり座ったり、歩いたりと、股関節をよく動かし、筋肉を均等に使ってあげることが大切なのです。
そうはいっても、職場や家庭で頻繁に立ったり座ったりしていては落ち着きません。股関節の柔軟性を維持するセルフケアとして、手軽にできるストレッチをご紹介します。
■大殿筋を柔らかくするストレッチ
- ①椅子に腰かけ、両脚を90度くらいに広げます。右足のかかとを左の膝の上にのせます。そのまま右手で下に抑えながら、息を吐き切るように深呼吸で、背筋と股関節を伸ばし10秒キープ。
- ②そのままの形で上体を前屈し、5秒キープ。
- ③反対側の方も同様に行います。
同じことを繰り返し、2~3セット行います。
■大腰筋を伸ばすストレッチ
- ①腰に手をあてて立ち、右足を大きく前へ出し、左足は残したまま、姿勢をまっすぐにして腰を落としていきます。息を吐き切るように深呼吸で、前足の膝が直角になるまで腰を落とし、10秒キープ。
- ②反対側も同様に行います。
同じことを繰り返し、2~3セット行います。
座りっぱなしの生活の人は、とくに念入りに股関節まわりを動かすよう心がけてください。いつまでも、体の若さを保つ秘訣ですよ。