トップコミットメント
サステナビリティへの取り組みを強化し、
持続的成長につなげていきます。
株式会社ヤクルト本社 代表取締役社長
ヤクルトグループの原点「代田イズム」
ヤクルトグループが世界の人々の健康を守りたいという想いは、創始者の代田稔から受け継いだものであり、私たちが大切にしているものです。代田は幼い頃、細菌感染症で苦しむ人々を目の当たりにし、このような現実に胸を痛めていました。その後、代田は、研究者の道を歩む中で、微生物に着目し、生きて腸までたどり着き、有用なはたらきをする「乳酸菌 シロタ株」を見出し、乳酸菌飲料「ヤクルト」を世に送り出しました。病気にかかってから治療するのではなく、病気にかからないようにする「予防医学」。人が栄養素を摂る腸を丈夫にすることが、健康で長生きにつながるという「健腸長寿」。腸を守る「乳酸菌 シロタ株」を一人でも多くの人に届けたいという願いから大切にしていた「誰もが手に入れられる価格で」。「代田イズム」と呼ぶこれらの考えは、ヤクルトのDNAとして受け継がれ、世界に広がっています。現在、日本を含む40の国と地域で1日当たり約4,000万本の乳製品をご愛飲いただくまでになりました。
各マテリアリティへの取り組み
ヤクルトグループは、その時代時代の社会課題に向き合ってきました。「Yakult(ヤクルト)1000」「Y1000」が皆さまから好評を得られたのも、ストレスや睡眠という現代の社会課題を捉え、ソリューションを提供できたからだと考えています。当社グループが持続的に成長し続けるためには、社会課題解決の一助となる商品・サービスを提供することと、社会が持続するような取り組みをすること、つまり、業績向上を図るだけではなく、今まで以上にサステナビリティへの取り組みを強化する必要があると捉えています。
サステナビリティを高めていくために、当社グループでは優先的に取り組む重要課題、マテリアリティを2020年度に特定しました。環境面のマテリアリティは「気候変動」「プラスチック容器包装」「水」、社会面のマテリアリティは「イノベーション」「地域社会との共生」「サプライチェーンマネジメント」です。
環境面では、1997年に「ヤクルト環境基本方針」を、2022年に「環境ビジョン2050」、中期目標である「環境目標2030」と短期目標「環境アクション(2021-2024)」を策定しました。「気候変動」では、脱炭素社会への移行を進め、再生可能エネルギーの導入等により、温室効果ガス排出量の低減に努めています。
「プラスチック容器包装」は、「Yakult(ヤクルト)1000」等の乳製品の市場が成長するとともに、プラスチックの使用量が増加しています。業績向上とプラスチック容器包装による環境負荷の低減、その両方に対応していきます。
「水」は、飲料メーカーとして不可欠であり、世界的な水不足などの課題が増加している現在、その重要性と責任を認識しています。持続可能な水利用を実践し、地域ごとの水リスクに対処しています。
このような取り組みを推進している中、現在の「環境目標2030」は、策定時に想定していたものと乖離しており、見直しを検討しています。
また、社会面のマテリアリティの一つに「イノベーション」を掲げています。当社グループが現在まで継続しているのは、その時々でイノベーションがあったからです。シロタ株の発見と商品化に始まり、宅配システムの導入や健康を支える商品の上市と続いています。しかし、このようなイノベーションは、待っていても何も始まりません。常に挑戦し続ける姿勢があったからこそ、実現しました。一方、これまでの成果、成功体験は、逆に発想を保守的にする可能性もあり、今一度、ビジネスモデル、組織、サプライチェーンや飲料・食品を中心としたマーケット自体を見直す必要性を感じています。変化する社会環境に対応するためには、それ以上のスピード感を持って変化しなくてはなりません。危機意識を持って、変化・成長を引き起こすのは、「人」です。経営層、従業員、ヤクルトレディ一人ひとりのイノベーションマインドが、当社グループの持続的成長につながります。
当社グループは、地域の皆さまの生活に根差すことにより、これまで事業を継続してきました。今後も地域社会とともに歩むことは重要であるため、マテリアリティの一つとして「地域社会との共生」を掲げています。代田から受け継いだものの中には「人の和」「真心」「親切」という価値観もあります。地域の皆さまには、商品や健康情報、ヤクルトレディとのコミュニケーションをとおして健やかな生活を提供しています。さらには、宅配事業だけではなく、地域の見守り・防犯協力活動や、地域で開催されるイベントへの協賛、自然保護のための植樹活動等にも取り組んでいます。
サステナビリティに取り組んでいくうえでは、当社グループばかりではなく、サプライチェーン全体で取り組んでいく必要があるため、「サプライチェーンマネジメント」をマテリアリティとしています。サプライチェーン全体で起こり得る環境問題や人権問題を把握し、是正に努めています。これらのマネジメントも当社グループが独善的にならないよう、サプライヤーとの対話を大切にしています。
サステナビリティを推進していく体制
「環境ビジョン2050」の実現に向け、ヤクルト本社に設置している環境対応を推進する専任部署では、海外事業所を含めヤクルトグループ全体や、社外の関係団体、自治体と連携を図っています。
また、サステナビリティは、環境だけでなく、人権等の社会問題への対応も欠かすことができず、取締役会でも時間をかけて議論する必要があります。本年、サステナビリティに関する対策や対応状況等について審議し、取締役会に答申する機関として、「サステナビリティ諮問委員会」を設置しました。サステナビリティ推進については、これまで以上に取締役会の監督機能を強化していきます。
むすびに
現在、2025年度からの中期経営計画策定に向け、持続可能な企業経営に結び付くよう、事業戦略と非財務戦略を検討しています。
これからもステークホルダーを代表とする皆さまとコミュニケーションを図り、企業の持続性、社会の持続性、地球の持続性に貢献できるように私たちができること、やるべきことに取り組んでまいります。
2024年11月