イノベーション マテリアリティ
ヤクルトのアプローチ
ヤクルトグループが持続的成長を続けるために、これまで培ってきた生命科学の追究を基盤とした商品開発のさらなる推進や、新たな価値を提供するサービスの創出が必要不可欠だと認識しています。「Yakult(ヤクルト)1000」(2019年発売)、「Y1000」(2021年発売)は、「ストレス社会」と言われる現代の社会課題の解決に貢献し、多くのお客さまからご支持をいただきまし た。今後もステークホルダーの声を聴きながら、社会課題の解決に貢献するイノベーションを生み出す体制や仕組みづくりを今まで以上に充実させ、ヘルスケアカンパニーへの進化につなげていきます。
担当役員メッセージ
取締役 専務執行役員 研究開発本部長
平野 宏一
イノベーションから始まったヤクルト
ヤクルトの創始者 代田 稔が医学の道を歩み始めた1921年。豊かとは言えない当時の日本で、衛生状態の悪さから感染症で命を落とす子どもたちが数多くいたことに心を痛め、病気にかかってから治療するのではなく、病気にかからないようにする「予防医学」を志し微生物研究の道を進みました。この「予防医学」の考え方こそが、当時治療医学が主流だった日本にとっては「イノベーション」だったのです。
また、現代でこそ、プロバイオティクスとして日常的に乳酸菌を摂る習慣はありますが、当時の日本で誰が実践していたでしょうか。誰がそのような考えをもっていたでしょうか。こうして代田 稔の研究で生まれたのが「乳酸菌 シロタ株」であり、この乳酸菌を一人でも多くの人に届けたいという想いのもと、有志とともに安価でおいしい乳酸菌飲料として商品化したのが「ヤクルト」なのです。
また、女性の社会進出がまだ盛んではなかった1963年、主婦が商品をお届けする「婦人販売店システム」を導入しました。今では「ヤクルトレディ」として広く認知される存在となっていますが、このシステムもイノベーションだったのではないかと考えます。現在日本を含む40の国と地域で多くの方にご愛飲いただき、商品だけでなくサービスも含めて身近なものと感じていただいているヤクルトですが、その始まりは「イノベーション」だったのです。
時代の変化とともに
前述しましたように、当社のイノベーションは「予防医学」から始まりました。その後の研究で、「乳酸菌 シロタ株」の継続摂取による、表在性がん膀胱がんの再発抑制作用※1や、免疫機能の指標の一つである「NK 活性」を高める作用※2を確認する等、乳酸菌の可能性を示したこともイノベーションです。
さらに、当社の「Yakult (ヤクルト)1000」や「Y1000」という商品が、世の中の多くの方に求めていただけたのも、現代特有の健康課題であるストレス・睡眠に対してアプローチするという、新しい価値を提供できたからであると感じています。
「価値創造」とは、人に寄り添うこと
時代とともに変わる「価値」をつくりだし、お届けするためには、今人々は何を求めていて、ヤクルトには何ができるのかを見極める必要があります。そのためには、あらゆる人の目線で考えることが大切です。代田 稔が一人でも多くの方の健康を願って始まったヤクルト。「人」を大切にしてきたヤクルトだからこそ、これからも、誰かを幸せにできる価値を創造し続けます。
※1 詳細は「Science Report NO.3」を参照してください。
https://www.yakult.co.jp/common/pdf/science_No3.pdf
※2 詳細は「Science Report NO.18」を参照してください。
https://www.yakult.co.jp/common/pdf/science_No18.pdf
2023年9月
常務執行役員 医薬品事業本部長
渡辺 秀一
乳酸菌研究から始まった「医薬品」で、一人でも多くの人の役に立つ
ヤクルトの医薬品研究は、1978年に当社が保有するL.カゼイ・シロタ株※に免疫賦活作用を介した抗がん活性があることが見いだされたところから始まります。これを契機に、抗がん剤の開発研究を開始し、「予防医学」の取り組みとあわせ、医薬品研究を行ってきました。
その結果、植物由来のがん化学療法剤「カンプト注(塩酸イリノテカン)」やがん化学療法剤「エルプラット(オキサリプラチン)」など、国内外で広く用いられる抗がん剤の開発につながりました。
すべては世界の人々の健康のため。医療・医薬の領域からも少しでも貢献したいという想いで、抗がん剤のみならず、当社独自の腸内細菌研究に基づき、マイクロバイオーム(細菌叢)を活用した付加価値の⾼い製品開発を行ってまいりました。
これまで医薬品事業において培ってきた知識や技術を、今後も「予防医学」・「治療医学」に生かすとともに、ヤクルトの発展と人々の健康に資する新たなイノベーションにつなげるべく、これからも邁進したいと思います。
※2020年4月以降、L.パラカゼイ・シロタ株に分類されています。
2023年9月
貢献するSDGs
社会課題の解決に貢献
ストレス社会といわれる現代においてメンタルヘルスケアが重要視されています。このような状況の中で、腸内細菌研究においては脳と腸の相互作用である「脳腸相関」に腸内細菌が深く関与している(脳-腸-微生物相関)ことが明らかになってきました。当社は「乳酸菌 シロタ株」の腸内環境改善作用の研究をさらに発展させ、脳腸軸を介した機能性の検証研究を進め、対ヒト試験において「乳酸菌 シロタ株」の継続飲用によるストレス緩和および睡眠の質向上作用を実証。本機能性を有する機能性表示食品の開発を進め、研究の実用化につなげました。
主な取り組み
人の健康に有用な菌の研究を進めています
中央研究所は、予防医学の見地から、独自のマイクロバイオーム研究を基盤に腸内フローラおよびプロバイオティクス※1 研究を活動の柱としています。世界各地の人々の腸内フローラ(腸内細菌叢)の違いや、疾病と腸内フローラの関わりなどを解明し、人々の健康づくりに役立つ研究を進めています。その一つとして、「L.カゼイ・シロタ株※2」の継続飲用が一時的な精神的ストレスがかかる状況下での「ストレス緩和」「睡眠の質の向上」の機能を有することを確認し、1本(100ml)に「L.カゼイ・シロタ株」を1,000億個含む乳製品乳酸菌飲料「Yakult(ヤクルト)1000」の商品化につながりました。2021年は店頭用の「Y1000」を発売しました。
※1 プロバイオティクス:十分量を摂取したときに宿主に有益な効果を与える生きた微生物(FAO/WHOによる定義。2002)のこと
※2 2020年4月以降はL. パラカゼイ・シロタ株に分類されています。
腸内フローラ解析システム「YIF-SCAN®」
乳酸菌やビフィズス菌等の
微生物コレクション
外部研究機関との共同研究
JAXAとの共同研究
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)との共同研究では、国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在する宇宙飛行士を対象に、プロバイオティクス(L.カゼイ・シロタ株)の継続摂取が腸内環境および免疫機能に及ぼす効果の科学的検証を行っています。宇宙実験の実施に先立ち、L.カゼイ・シロタ株を宇宙環境で長期保管したところ、プロバイオティクスとしての機能が維持されることを確認しました。
大阪国際がんセンターとの共同研究
大阪国際がんセンターとの共同研究で介入試験を実施し、シンバイオティクス(L.パラカゼイ・シロタ株およびB.ブレーベヤクルト株+ガラクトオリゴ糖)の摂取が術前化学療法中の食道がん患者の腸内フローラおよび腸内環境のバランスを改善し、化学療法中の有害事象を抑制することを確認しました。この結果については、学術雑誌『Clinical Nutrition』(2022年4月1日掲載)に報告されています。
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