イノベーション
マテリアリティ
ヤクルトのアプローチ
ヤクルトグループが持続的成長を続けるために、これまで培ってきた生命科学の追究を基盤とした商品開発のさらなる推進や、新たな価値を提供するサービスの創出が必要不可欠だと認識しています。「Yakult(ヤクルト)1000」(2019年発売)、「Y1000」(2021年発売)は、「ストレス社会」と言われる現代の社会課題の解決に貢献し、多くのお客さまからご支持をいただいています。今後もステークホルダーの声を聴きながら、社会課題の解決に貢献するイノベーションを生み出す体制や仕組みづくりを今まで以上に充実させ、ヘルスケアカンパニーへの進化につなげていきます。
担当役員メッセージ
取締役 専務執行役員 研究開発本部長
平野 宏一
イノベーションから始まったヤクルト
ヤクルトの歴史は「イノベーション」によって築かれています。ヤクルトの創始者代田 稔は、当時の日本で、衛生状態の悪さから感染症で命を落とす子どもたちが数多くいたことに心を痛め、病気にかかってから治療するのではなく、病気にかからないようにする「予防医学」を志し微生物研究の道を進みました。こうして生まれたのが「乳酸菌 シロタ株」であり、乳酸菌飲料として商品化したのが「ヤクルト」なのです。当時は「予防医学」や「乳酸菌摂取の習慣化」という考え方はなく、社会に大きな変化をもたらしました。革新的な研究と技術によって生み出された「ヤクルト」こそ、まさに「イノベーション」を体現した商品であると考えます。
生活者のニーズに応えるイノベーション
「ヤクルト」が誕生してから約90年。時代とともに生活スタイルや価値観が変化したり、ヤクルトが展開する国・地域が拡大したりすることで、お客さまのニーズは多様化しています。そうした多様なニーズを捉え、「ヤクルトならではの価値」をお届けすることが私たちに求められています。そして、その「ヤクルトならではの価値」をつくり出すには、イノベーションが不可欠です。例えば、「Yakult(ヤクルト)1000」や「Y1000」という商品は、「乳酸菌 シロタ株」を高密度にすることで、現代社会の健康課題であるストレスや睡眠に対してアプローチするという、新しい価値を提供しました。また2023年には、高まるペットへの家族意識を捉え、株式会社ジャパンペットコミュニケーションズと資本業務提携し、ヤクルト独自の素材を提供した協働企画商品として犬用サプリメントを発売しました。常に変化を続ける市場環境に適応し、持続的に成長するためには、常に新しいアイデアや技術を探求し、次世代の製品やサービスを提供しなければなりません。それが結果としてお客さまのニーズに応えることや、課題を解決することにつながると信じています。また、イノベーションは製品やサービスの開発だけにはとどまりません。「ヤクルトレディ」として広く認知される宅配システムもまた、女性の社会進出がまだ盛んではなかった当時において、革新的な販売システムだったと考えます。最近では、ヤクルトレディによる商品のお届けをインターネット上で申し込むことができる「ヤクルト届けてネット」や、離れている家族へのお届けを注文できる「家族に届けてネット」など、販売システムも時代の変化に伴い進化を続けています。
イノベーションを加速させる企業風土の醸成
私たちがグローバルでさらなる成長を果たすためにも、イノベーションは欠かせません。そしてそのイノベーションは社員一人ひとりの創造的な発想から生み出されると考えます。そこで2023年度は、新たな価値を創出するイノベーション思考を備える人材育成の機会として、「イノベーション思考力習得研修」を実施しました。さまざまな部署に所属する社員同士で意見交換することにより、部署固有の考え方や、受講者個々の固定観念から脱却し、全社最適化で考えることができるプログラムとなっています。これからもこのような機会を多くの社員に提供し、社員から出てくる自由なアイデアをイノベーションの原動力にしてまいります。また、自社だけにとどまらず、さまざまな社会課題の解決にも取り組みます。そのためにも、社外のステークホルダーとも積極的に連携し、社外の研究機関などと相互支援し研究しています。異なる視点と専門知識を持つパートナーと協力することで、イノベーションを起こし、社会課題の解決にもつながる新しいビジネスモデルを創出します。
「価値創造」とは、人に寄り添うこと
イノベーションはヤクルトのコーポレートスローガンである「人も地球も健康に」を実現するための重要な手段です。これからも、生活者一人ひとりに寄り添い、ニーズと課題を理解して、それらに対応するソリューションを提案することで、世界中の人々の健康で楽しい生活づくりに貢献します。
2024年11月
主な取り組み
人の健康に有用な菌の研究
中央研究所は、予防医学の見地から、独自のマイクロバイオーム研究を基盤に腸内フローラおよびプロバイオティクス※1 研究を活動の柱としています。世界各地の人々の腸内フローラ(腸内細菌叢)の違いや、疾病と腸内フローラの関わりなどを解明し、人々の健康づくりに役立つ研究を進めています。その一つとして、「L.カゼイ・シロタ株※2」の継続飲用が一時的な精神的ストレスがかかる状況下での「ストレス緩和」「睡眠の質の向上」の機能を有することを確認し、1本(100ml)に「L.カゼイ・シロタ株」を1,000億個含む乳製品乳酸菌飲料「Yakult(ヤクルト)1000」の商品化につながりました。2021年は店頭用の「Y1000」を発売しました。
※1 プロバイオティクス:十分量を摂取したときに宿主に有益な効果を与える生きた微生物(FAO/WHOによる定義。2002)のこと
※2 2020年4月以降はL. パラカゼイ・シロタ株に分類されています。
乳酸菌やビフィズス菌等の
微生物コレクション
外部研究機関との共同研究
JAXAとの共同研究
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)との共同研究では、国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在する宇宙飛行士を対象に、プロバイオティクス(L.カゼイ・シロタ株)の継続摂取が腸内環境および免疫機能に及ぼす効果の科学的検証を行っています。宇宙実験の実施に先立ち、L.カゼイ・シロタ株を宇宙環境で長期保管したところ、プロバイオティクスとしての機能が維持されることを確認しました。
国立長寿医療研究センターとの共同研究
国立長寿医療研究センターが2023年に開始した長期縦断疫学研究「東浦研究」に参画し、乳酸菌摂取が高齢者の脳やからだの健康に果たす役割を解明することを目的とした共同研究を行っています。この共同研究は2027年度末までの期間を予定しており、その中で得られた情報は予防医学に基づく乳酸菌摂取の生理的意義の解明に役立てられます。
イノベーション研修の実施
長期ビジョン「Yakult Group Global Vision 2030」では、「世界の人々の健康に貢献し続けるヘルスケアカンパニーへの進化」を目指す姿とし、これまで培ってきた生命科学の追究を基盤とした商品開発のさらなる推進や、新たな価値を提供するサービスの創出を目指しています。
そこで、新たな価値を創出するイノベーション思考を備える人材を育成するために、2023年度に新たに「イノベーション思考力習得研修」を実施しました。当研修では、イノベーションに必要な能力と知識の習得を目標とし、社員112名が受講しました。講義のみならず、受講者個々が固定観念から脱却して顧客のニーズを追求することを目標にグループワークを実施し、全5回(計5日間)の研修の最終回には、成果発表テーマ「時代の変化に応じてヤクルトが社会に提供するべき商品・サービスを提案する」に基づき、グループごとに提案内容を発表しました。今後も、当研修での人材育成をとおして、イノベーション思考の習得、さらには新たな価値の創出につなげたいと考えます。
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