~2024年3月期 通期 決算説明会 5月14日(抜粋)~
はじめに
2024年3月期の売上高は、5,030億円、営業利益は633億円、経常利益は793億円、親会社に帰属する当期純利益は510億円となりました。
2025年3月期については、売上高5,335億円、営業利益685億円、経常利益は865億円、親会社に帰属する当期純利益555億円、1株当たり当期純利益は183円08銭という連結業績予想を発表しました。
前期において、国内事業ではヤクルト1000シリーズ、海外事業では米州地域の実績が伸長しましたが、アジア・オセアニア地域、特に中国の景況感悪化の影響が続いており、全体の営業利益は前年を下回る結果となりました。
今期は、国内事業のさらなる成長に加え、海外事業では米州地域の継続的な伸長を見込んでいます。
アジア・オセアニア地域については、中国の実績が下期以降に回復することを想定した計画となっています。
また、今期の業績予想は、「中期経営計画」最終年度の目標を下回っています。国内事業では、ヤクルト1000シリーズの伸長が想定よりも下回ったこと、海外事業では、中国の経済環境の急激な悪化を織り込んでいなかったことが主な要因です。
ROEについても前期は10%を下回りましたが、早期に回復し、長期的には、さらなる向上を目指していきます。
また、次の「中期経営計画」については、現在、策定中ですので、開示できる状況になったところで、お知らせします。
配当について
配当については、「継続的な増配を目指すことを最優先とする」という配当方針のもと、今期についても、業績の進捗を踏まえつつ、1株につき8.5円の増配、年間配当予想を64円と発表しました。
各事業の取り組み
国内飲料食品事業
前期は、ヤクルト1000シリーズが国内事業の増収増益を牽引しましたが、販売促進活動が十分にできる生産供給体制をつくることができず、最大生産能力を意識しながらの活動となりました。
しかし、課題であった生産能力を2024年1月に増強し、供給体制を整えましたので、今期は精力的に販売促進活動を行います。
また、広告活動については、ヤクルト1000シリーズへの広告投資、「乳酸菌 シロタ株」の優位性の訴求などを重点テーマとして露出を増やし、売り上げ増大を後押ししていきます。
宅配チャネル
「Yakult(ヤクルト)1000」の生産能力を増強し、2024年3月末時点で1日あたり約285万本となりました。
前期は、ヤクルトレディによる新規の増客活動が十分にできませんでしたが、徐々に活動が活発化してきましたので、今期はヤクルトレディによる価値普及活動をより徹底していきます。
また、「ヤクルト届けてネット」においても、キャンペーンの実施などで、お客さまの数を徐々に増やし、確実に販売本数を積み上げていきます。
店頭チャネル
「Y1000」の生産能力は、2024年3月末時点で1日あたり約140万本となりました。販売実績も順調に推移しています。
前期は、店頭の棚に商品がない状況が続きましたので、積極的な販売促進活動ができませんでした。しかし、今期は精力的な活動に踏み切ることができます。
まだまだ潜在需要の掘り起こしは可能ですので、チャネルの拡大と取引店舗あたりの販売本数を伸ばしていきます。
Newヤクルト類は、2023年9月に1本40円から48円へ価格改定を実施しました。
販売本数は減少しましたが、現在、マーケットごとの販売促進活動を強化し、地道な価値普及活動を継続しています。
店頭での効果的な売り場づくりを提案しながら、お客さまに商品が持つ価値を再認識していただき、販売本数を回復させます。
国際事業
前期は、世界各地で経済活動が正常化し、景気回復、消費マインドの改善が期待されましたが、世界経済の回復ペースは遅く、地域間格差も大きな一年となりました。
アジア・オセアニア地域ではベトナム、オーストラリア、米州地域ではメキシコ、アメリカといった実績好調な事業所があった一方で、販売規模の大きな中国、インドネシアは消費者の節約志向が続いたことが実績にも影響しました。
特に中国では、長引く消費低迷と市場環境が変化する中、実績回復への営業施策の転換に時間を要しています。
引き続き、前期を下回る事業所を安定成長の事業所でカバーしていきますが、しばらくは成長率の停滞が続くと思います。
しかし、海外事業の潜在的な成長ポテンシャルが高いことは変わりませんので、少し時間はかかりますが、各事業所の状況に合わせた活動が実を結び、海外全体が徐々に上向いていくと考えています。
アメリカ
安定的な伸長が継続しています。
南西部6州での深掘りと中部、東部への販売地域の拡大が両輪で成長を後押しし、1日あたりの販売本数が70万本を超えています。
また、第1工場であるカリフォルニア工場の生産能力が数年後に上限に達することを見込み、物流面の効率化も望める南東部での工場建設を計画しています。
生産する商品や稼働時期などは検討中ですので、具体的なことが決まり次第、お知らせします。
メキシコ
販売本数は、コロナ禍前の2019年度の水準に回復しており、ヤクルトレディ数、取引店舗数も順調に増加しています。
毎年、価格改定をしながら、前年の販売本数を上回る、かつての成長ペースに戻りましたので、今後も米州地域の増収増益に大きく貢献します。
ベトナム
販路の拡大が順調に進み、前期の1日あたりの販売本数が初めて100万本を超えました。
2024年4月には低カロリータイプの「ヤクルトライト」を導入し、商品アイテム数を増やすことで、一段と露出は高くなっています。
宅配、店頭ともに拡大フェーズにありますので、今後も成長が期待できる事業所です。
中国
前期は、経済活動の再開によって販売本数は上向くと期待していましたが、予想以上に中国経済の回復が遅れており、消費の低迷が続いています。
コロナ禍を経て、消費行動は大型店舗での大量購入から中小型店舗での必要な量の購入へ変化していますので、この変化に対応すべく、ルート体制の見直しを行っています。
2人体制で行っていた大型店舗への納品ルートを減らし、1人体制の中小型店舗向けのルートを増やしました。そして、より細かく地域を網羅するバイクを使ったミニルートの導入も進めています。
また、EC経由で買い物をする方が増えていることから、テンマオやジンドンといった大手のECプラットフォームに旗艦店を立ち上げました。今期は全体の販売本数に占めるECチャネルの構成比を上げていきます。
続いて、2024年5月、新商品「ヤクルト ピーチ風味・鉄プラス」を発売しました。ヤクルトの存在感を高め、新たな需要を喚起し、売り上げの増大を図ります。
消費者の商品理解度を高め、中国においてヤクルトがさらに浸透、定着していくためには、ヤクルトレディの組織拡大が不可欠だと考えています。
中長期的な施策として、宅配事業の再構築に取り組み、組織拡大に向けてモデルとなる営業所を水平展開することで、宅配事業の販売本数を増やします。
さまざまな営業施策を展開することで、今期、下期以降に実績が回復してくると考えています。
インドネシア
消費の低迷は、いまだ続いており、販売本数が前年度を下回っている状況です。
しかし、内部要因に挙げていたヤクルトレディの「売る力」は、対面教育の再徹底によりコロナ禍前の水準に戻りました。
現在は、ヤクルトレディ1人あたりの販売本数の回復に注力しています。今後、ヤクルトレディ数を増やす活動が本格化し、強固なヤクルトレディ組織を再構築することで、今期、徐々に成果が表れてくると考えています。
新領域への展開
「Yakult Group Global Vision 2030」や「中期経営計画」で示した「事業領域の展開」についても進展がありました。
2023年9月にポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社からの植物性ヨーグルト事業の取得についてお知らせしましたが、あわせて、2024年3月にポッカサッポロ群馬第二工場の資産を取得することを発表しました。
植物性ヨーグルト事業とあわせて製造設備も取得し、製販一体の事業を当社にて展開することが、両社の事業効率および市場拡大のために最適であると判断しました。
2024年10月に予定している製造設備の取得後、当社商品の製造を開始することで、植物素材利用食品の展開が、また一歩前へ進みます。
健康経営
当社が「ヘルスケア・カンパニーへの進化」を遂げるためには、従業員が健康でいきいきと働き続ける職場環境づくりが不可欠と考え、継続して「健康経営」に取り組みます。
企業理念の実現を目的に、専任部署が「健康経営」を推進しております。今般、従業員の健康への経営的な取り組みが評価され、初めて「健康経営銘柄」に選定されるとともに、「健康経営優良法人・ホワイト500」に7年連続で認定されました。
今後もお客さまに「健康」をお届けする会社として、「健康経営」を推進し、企業価値の向上を目指していきます。
統合報告書
2024年3月に「統合報告書」を発行しました。
ステークホルダーの皆さまに対して、当社独自の強み、経営ビジョン、重点テーマの進捗状況を伝えられるレポートと考えています。
当社の事業をより深く、正しく知っていただくため、毎年、少しずつ内容に磨きをかけていきます。
引き続きご指導、ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。
株式会社ヤクルト本社
代表取締役社長
成田 裕