~2021年3月期 第2四半期 決算説明会 11月13日(抜粋)~
はじめに
第2四半期の決算内容は、売上高1,904億円、営業利益は241億円となり、減収・増益となりました。
併せて、本日発表しました通期業績予想は、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえたことと、為替を9月までの実績に置き換えた結果、売上高を230億円、営業利益を40億円それぞれ引き下げ、売上高3,880億円、営業利益430億円といたしました。
そして、2021年3月期の配当予想については、株主の皆さまに、より一層の利益還元を図るため、第2四半期末および期末配当金予想をそれぞれ24円から2円の増配を行い、年間52円とすることを本日発表いたしました。
各事業の振り返りと取り組みについて
国内飲料食品事業
4月~9月の国内乳製品の1日当たり販売数量は、累計で前年を上回りました。お客さまの健康維持への備えとして乳酸菌に対する期待が高まり、当社商品の飲用につながったと考えています。
しかしながら、清涼飲料につきましては、外出自粛やレジャー施設の休業等により、自動販売機の実績が低迷し、前年を大きく下回りました。その結果、売上高合計としては、ほぼ前年並みの実績となりました。
宅配チャネル
新たな高付加価値・高単価商品として、昨年10月に販売を開始した「Yakult(ヤクルト)1000」につきましては、8月31日から販売地区を拡大し、現在、日本の東半分のエリアで販売しています。一方、今年1月に販売を開始した「ヤクルト400W」は4月、6月と販売地区を拡大し、現在、日本の西半分のエリアで販売しています。
どちらの商品も実績は好調に推移しており、さらに全国展開に向けて準備も進めています。この高付加価値・高単価商品の販売数量の増大は、当社ならびに販売会社の収益改善のみならず、ヤクルトレディの収入アップにも結びついていきます。大型商品とするべく、大切に育てていきたいと思います。
さて、新型コロナウイルスの感染拡大は、当社独自のヤクルトレディシステムのあり方に一石を投じることとなりました。
その一つは、お届け方法です。
4月に緊急事態宣言が発令された際には、全国のヤクルトレディを通じて「お客さまニーズに合わせたお届け方法の確認」を行ないました。その結果、多くのお客さまが対面によるお届けを希望される一方で、対面を希望しないお客さまも一定数いらっしゃることが確認されました。そのため、非対面によるお届けや金銭の受け渡しを希望されるお客さまに対しては、専用の保冷受け箱を用意してのお届けや、インターネットからのお申込みによる「ヤクルト届けてネット」をご紹介しています。
「ヤクルト届けてネット」については、お客さまの利便性をより一層高めていくために、お届け対応時間の拡大等について、検討を行なっています。
また、お客さまに商品をお届けするヤクルトレディの働き方改革も進めていきます。働き手のニーズに合わせ、多様な勤務形態を設け、柔軟なお客さま対応を行える販売体制づくりを目指し、新たな働き方、働き手の採用に着手していきます。中でも、ヤクルトレディの処遇改善としては、以前お伝えした「社員化」が重要であると考えています。これについては今年度中に全国の販売会社で制度が整うよう、進めています。
既に半数以上の販売会社で導入していますが、具体的には売上金額など一定の条件を満たし、雇用を希望するヤクルトレディを対象に社員化を進めていきます。安定的、そして多様な働き方を選択できる環境整備を推進して組織基盤の強化を図り、売上の拡大を目指します。
店頭チャネル
新型コロナウイルスの感染拡大の影響により人の流れが変わり、事業所、学校、パチンコホールなどにおける販売実績は低迷しました。月を追うに従い、徐々に実績は回復してきていますが、引き続き、きめ細かな対応を販売会社と連携をとりながら進めていきます。
一方、店頭チャネルの過半数を占める量販店での販売実績は好調です。販売現場では販売促進活動の自粛や制限を余儀なくされましたが、映像と音声で価値を伝えられる電子POP資材等を中心に活動を展開しました。この結果、量販店での販売実績は2桁に近い伸びとなりました。
店頭での販売促進活動は徐々に再開しているところですが、買い物時間の短縮といったお客さま行動の変化も見られます。引き続き、新たな生活様式においてもヤクルトの価値を伝えられる方法を模索し、お客さまに商品を選んでいただきたいと思っております。
国際事業
新型コロナウイルス感染拡大による当社事業への影響は、国によって異なります。
以下、いくつかの国の状況について説明します。
中国
新型コロナウイルスの影響も加わり、中国における当社を取り巻く環境は刻々と変化しています。この変化に迅速に対応するべく、策を講じていますが、以前のような安定した成長路線に戻るのは、新型コロナウイルス感染症のワクチンが世界的に多くの人々に行き渡るのが1つの目安になると考えており、来年の後半以降になるかと思っています。成長路線への回帰のために、これまでの取り組みをさらに推し進めてまいります。
具体的には、EC市場への対応です。既に巨大市場となっていますが、従来のドライ商品を中心とした流通に加え、最近はチルド物流が担保できる業者も増えてきました。そのため、今後はEC取引を積極的に拡大してまいります。現在、当社におけるECチャネルの構成比はまだ1桁台ですが、今後はより訴求力アップを図り、新たな展開を加速するとともに、これまで導入していなかった広州エリアにおいてもEC事業をスタートする予定です。
また、長期愛飲者づくりに有効な宅配チャネルの拡大・充実も加速させます。現在、中国における宅配の比率は約1割で、ヤクルトレディ数は約3000名です。このうち、約2000名を占める広州エリアでは一層の組織強化を進めるとともに、広州以外のエリアにおいても消費者の理解促進を図るため、宅配チャネルづくりを積極的に推進していきます。
インドネシア
新型コロナウイルスにより業績への影響を一時的に受けたものの、その後は急速に回復した国の1つです。事業成長のドライバーである宅配チャネルでは、5月度にヤクルトレディの数が1万人の大台を超えましたが、まだまだヤクルトレディの数は必要です。インドネシアにおける女性の社会進出の一助としてもヤクルトレディを増やし、今後も持続的な成長を図りたいと考えています。
メキシコ
メキシコ経済は昨年のGDP成長率が10年ぶりのマイナス成長となり、その影響が当社事業においても現れ、これに新型コロナウイルスの感染拡大が加わり、ヤクルトレディの稼働が下がったことなどから、一層厳しい状況となっています。1981年の事業開始以降、一度も前年を下回らずに堅調に販売本数を伸ばしてきましたが、今期についてはかなり難しいと見ています。経済の回復により個人消費が高まり、ヤクルトの販売本数が回復するのは、中国と同じように来年の後半以降になるかと考えています。
米国
新型コロナウイルスの感染者数は世界で最も多い国ですが、幸いにも当社事業は通常どおりの生産、納品ができています。米国での販売については、一括物流による量販店での販売を主体に店頭チャネルのみで展開しています。コロナ禍の下では店頭でのプロモーション活動が行なえない状況ですが、販売実績は好調に推移しています。アメリカにおいても、いよいよプロバイオティクスに期待する人々が増加しているのではないか、そのように思っております。
新型コロナウイルス感染症の収束が見えない中、これは米国に限ったことではなく各国で行なっているものですが、医療・高齢者施設や学校等へヤクルトの無償提供を積極的に行なっています。こうした地道な貢献活動がヤクルト商品への理解につながれば嬉しいことだと思っております。
医薬品事業
医薬品事業に関しては、昨年10月、そして今年4月の薬価改定により、この上半期の売上高は大きな影響を受けました。また、新型コロナウイルスの感染拡大により、当社の強みであるMRによる医療機関への訪問も自粛しました。そうした中、当社は医療関係者のニーズに合わせ、Web会議等を通じた情報提供活動や適正使用の推奨を、先発メーカーとしてできる限り行なってまいりました。
今後もがん領域に特化した医薬品事業を継続していくため、相手先ニーズに合わせた情報提供活動、適正使用の推奨を引き続き推進していきます。
また、日本セルヴィエ社とプロモーション契約を結び、今年3月に販売承認を取得し、6月から上市した抗悪性腫瘍剤「オニバイド」につきましては、医療機関への訪問規制があるものの、想定より速いスピードで医療機関に採用されています。今後もこのような他社とのアライアンスも積極的に進めてまいります。さらに、当社主力商品である「エルプラット」の売上確保と維持はもちろんのこと、新規後発医薬品の継続的上市を通じ、実績回復につとめてまいります。
ダノン社による当社株式の売却について
既にリリースをしている内容ではありますが、当社筆頭株主であったダノン社は、保有する当社株式を10月7日にすべて売却しました。
2000年にダノン社が当社株式を約5%取得し、2003年、約20%の保有割合となった後、2004年に当社とダノン社は戦略提携の契約を締結しました。既に海外進出を進めていた当社にとって、この契約締結は、全世界へプロバイオティクスを普及するという、海外事業の展開を加速する契機となりました。
現在、海外に進出している国と地域の数は39となり、その販売本数は2001年3月期の1,434万本から、2020年3月期には3,162万本と2倍以上に増えました。また、海外事業セグメントにおける営業利益率は20%を超え、当社営業利益の牽引役となっています。
ダノン社の経営戦略により当社株式の売却が行なわれましたが、ダノン社と当社は、これからも友好的な関係を維持し、全世界へのプロバイオティクスの普及に、ともに取り組んでまいります。
結び
世界で未曾有の影響を及ぼしている新型コロナウイルス感染症のもと、当社は幸いにも各国で事業活動を止めることなく継続しています。これまでの日常とは異なる状況において、従来にも増して健康への意識とヤクルトに対する期待が高まってきていると感じています。
これを好機ととらえ、国内外において愛飲者づくりにより一層注力していきたいと考えています。
また、事業推進の一方で、長期的な企業価値を高めていくという観点では、環境・社会・ガバナンスといったESGへの取り組みは極めて重要なテーマです。
特に環境におけるプラスチック問題は避けては通れない課題です。当社においては、既に海外の一部の国でストローを廃止しており、また、欧州においては7本のフィルム包装をやめ、紙を使ったカートン包装に変更しています。日本においては、2025年までに環境配慮型容器包装の基礎技術を確立し、2030年までに最大限の転換を図るという「プラスチック資源循環アクション宣言」を行ないましたが、できる限り前倒しの勢いで取り組んでいきたいと思っています。
引き続き、ご指導ご鞭撻を賜りますよう、お願い申し上げる次第です。
株式会社ヤクルト本社
代表取締役社長
根岸 孝成