人も地球も健康に Yakult

今後の経営展望について

~2018年(平成30年)3月期 通期 決算説明会 5月10日(抜粋)~

はじめに

平成30年3月期の売上高は4,015億円、営業利益は434億円。前期に対して、事業のコアである飲料食品事業が国内および海外ともに牽引し、増収・増益となりました。
平成31年3月期については、売上高4,180億円、営業利益465億円、親会社に帰属する当期純利益355億円、1株当たり当期純利益は221円19銭という連結業績予想を発表しました。
主な事業の取り組みについては、以下のとおりです。

各事業の取り組みについて

国際事業

国際事業は、1964年に初めての海外進出となる台湾での事業展開を開始して、今年度は55年目を迎えました。現在は37の国と地域で、2万2千人の社員と、4万6千人のヤクルトレディにより事業展開を行っています。
ヤクルトの国際事業は、進出した国の人々のために、日本で定めた品質を守りながら、その国に住む人が中心となってヤクルトを製造し、商品の説明を行い、お客さまを増やすことで、世界各地で拡大してきました。そして今、プロバイオティクスの理解は進み、プロバイオティクスに対する期待は世界中で高まってきています。ヤクルトの飲用を通じて、人々の健康に寄与するという活動を、これからも世界中で展開していきたいと思っています。

ブラジル

1968年の創業から半世紀が過ぎました。販売本数は、創業から30年で販売本数のピークを迎えた後に、ハイパーインフレによる市場経済の混乱による影響を受け、販売本数は半減しました。その後、建て直しのために日本から社員を派遣する等、サンパウロ州を中心に、宅配システムの見直し、納品店舗との取引の見直しなどを進めた結果、販売本数は回復してきました。近年は再びインフレによる個人消費の減退から、本数的には若干苦戦を強いられましたが、足元では経済指標も改善してきていることから、継続的な成長を目指していきます。

メキシコ

1981年の創業から今年で38年目を迎えました。創業から15年目以降に地方エリアへの事業展開を本格的に開始し、販売本数が伸びました。現在は、総人口1億2千万人に対し、その8割弱の約9千5百万人をカバーしています。
メキシコ全体での2017年度の人口比(1日平均販売本数をカバー人口で割って算出した浸透状況の目安)は4%弱ですが、古くからの市場である首都メキシコシティとその近郊のメキシコ州では、6%を超える人口比となっており、市場の深耕が進んでいます。このような事例を踏まえて、他の都市においても、きめの細かい市場づくりを通じて、安定した成長を図っていけると考えています。

インドネシア

1991年の創業から28年目を迎えました。創業から宅配と店頭の両チャネルでの市場づくりを10数年進めた後に、宅配チャネルに焦点をあてた政策に着手し、研修を通じたスキルアップ、ならびにヤクルトレディの増員により業績は急拡大してきました。昨年度の販売本数の伸びは、天候不順や個人消費の減退などにより、若干鈍化しましたが、人材育成に力を入れた組織強化を続けることで、さらなる業績拡大を目指していきたいと考えています。

中国:広州(広東省)

中国におけるヤクルト事業は2002年に広州で開始し、17年目を迎えました。人口が1千万人を超える広州市、深セン市を中心に事業展開を進め、販売本数は毎年順調に増加してきました。これらの大都市では、今後も販売本数の拡大が見込まれることから、引き続き市場深耕を進めていきます。そして、2大都市以外の衛星都市および地方都市への市場拡大・深耕も進めていきます。昨年は清遠市と恵州市に、今年1月には、中山市に販売拠点を新設しました。新たに販売拠点を設けたことで、エリア内での販売網は広がり、店頭チャネルにおける市場拡大と市場深耕が加速してくると考えています。

中国:その他中国(「広東省・上海・北京」以外

この地域では、2006年に進出以降、順次販売市場の拡大と深耕を進め、販売本数は毎年右肩上がりに増加しています。2017年末現在では、5億6千万人の方を対象として、主に店頭での販売を中心に行っています。しかし、この地域には10億人以上の方が住んでいることから、これからも毎年販売エリアの拡大を図り、より多くの方が店頭でヤクルトを手にすることができる市場づくりを進めていきたいと思います。
また、既存市場には、2017年12月末現在、32の販売拠点があり、流通網の拡大に取り組んでいます。進出が早かった沿岸部では、既存の販売拠点に隣接する都市に新たな販売拠点を設けることで、きめ細かな販売網を「面」で展開し、より密度の濃い市場づくりを進めています。一方、内陸部の販売拠点は、進出してから間もない拠点が多いことから、販売拠点を核にして、波紋が広がるように販売網を広げる、いわば「点」を拡大していくイメージの市場づくりを進めています。
先行市場である「広州」と比較すると、ひとつの販売拠点が管理する販売人口は、「広州」の1.6倍の規模があります。これに対して、ひとつの販売拠点で納品を行っている店舗数は、「広州」のわずか5分の2にとどまっています。そのため、人口比は「広州」の約3%に対して、まだ0.6%と上昇の余地が十分にあります。これからも納品店舗数の拡充を図り、販売網の整備を進めていくことで、購買機会の創出に努めていきたいと考えています。

国内飲料食品事業

当社は、ヤクルトブランドの価値向上のために、2年前からメディアを使った広告宣伝に力を入れると共に、商品の価値に見合った価格改定を実施してきました。広告およびそれに連動した各地域での販売活動により、店頭チャネルにおけるNewヤクルト類、宅配チャネルにおけるヤクルト400類を中心に乳製品の販売本数は増加しました。これからもヤクルトブランドを選び続けていただくために、安全安心な製品づくりは勿論ですが、健康情報の提供などを行い、継続飲用の大切さを伝えていきたいと思います。

今年度の広告展開については、「ヤクルトブランドへの集中と主要乳製品の鮮度アップ」ならびに「ヤクルトとお客さまとの接点の最大化、継続的なファンづくり」を重点テーマとしていきます。
TVCMは「ヤクルト広告3本の矢」を3年目となる今期も継続させます。コンセプトを変えずに、判り易いタグラインを用いることで、TV広告による累積効果を最大限に発揮させ、「商品・ブランド力」、「研究開発・技術力」、「組織力・販売力」をより強く伝えていきたいと考えています。

広告展開に加え、ヤクルトブランドに対するより高い好感度・愛着心を持っていただけるように、広報活動を通じ、乳酸菌の働きや未来につながる乳酸菌の可能性について情報提供も進めていきます。
「出前授業(学校で、消化の仕組みや乳酸菌の働き等を伝える活動)」は、年間での開催数が既に3千回を超え、受講者数は20万人を上回るまでの規模となり、教育現場からも高い評価をいただくようになりました。工場見学と共にますます力を入れていきたいと思います。
また、未来のテーマとして取り組んでいるJAXA(宇宙航空研究開発機構)との共同研究についても、両社によるPR活動を推進し、乳酸菌の可能性を伝えていきたいと思います。

そして、医師、看護師、薬剤師、管理栄養士などのオピニオンリーダーを対象とした、当社プロバイオティクス商品による医療領域における有用性に関する研修会への講演依頼も増えていますので、今期も引き続き活動に注力していきます。

一方、お客さまにより近い販売現場では、地域密着での価値普及活動の積極展開を進めていきます。
宅配では、ヤクルト宅配の優位性をさらに高めていく取り組みとして、ヤクルトレディが商品の価値を、お客さまに直接お伝えする活動に加えて、健康教室など「エリア価値普及活動」に一層注力していきます。また、昨年より開始した宅配専用Web受注システム「ヤクルト届けてネット」については、今年度中に全国展開を図ると共に、積極的な活用促進に力を入れていきます。
店頭では、当社の最重点市場であるスーパーマーケットにおいて、各販売会社の「フィールドスタッフ」による売り場づくりと「プロモーションスタッフ」によるお客さまづくりの活動を、より活性化させていきます。また、CVS市場については、チャネル攻略のための商品ラインアップも進んできていることから、定番商品化による売り場の確保・拡大に努めていきます。そして、「その他の市場」では、「病院」、「学校」、「事業所」などを対象とした、乳製品の価値普及活動を行い、お客さまづくりを進めていきます。

以上のとおり、「商品」・「広告」・「広報」・「営業活動」を複合的に連動させることで、ヤクルトのブランド価値をさらに引き上げ、お客さまづくりに結びつけていきたいと思います。

医薬品事業

今期の医薬品事業の業績予想は、売上高および営業利益ともに、厳しい見通しを立てています。
売上高については、「薬価改定」ならびに「エルプラットの後発医薬品への置き換わり」という2つのネガティブな要因があります。
1つ目は薬価改定ですが、今回の薬価改定では、エルプラットが12.3%の引き下げとなり、当社が取り扱う医療用医薬品全体では、10%台半ばの薬価引き下げとなりました。
2つ目はエルプラットの後発医薬品への置き換わりですが、「2020年9月までに後発品使用割合を80%とする」という、政府によるさらなる後発医薬品の使用促進策により、今後もエルプラットの後発医薬品への置き換わりが進んでいくことを見込んでいます。

売上高の減少に直面していますが、がん領域に特化した医薬品事業を継続していくために、中長期的な収益の回復・拡大を図っていきたいと考えています。
売上高増加のためには、新たな素材が必要であることから、今期計画では、研究開発費の積み増しを行っています。
来期以降の収益については、赤字幅が縮小していく見通しを立てています。しかし、研究開発投資に対する回収には時間がかかるため、3年間は厳しい時期を余儀なくされると見込んでいます。その後は売上高増加による収益の回復・拡大を目指します。
その間においても、現在サノフィ社と行っているザルトラップの共同販促は、当初計画を上回って推移していることから、他社とのアライアンスの好事例として、提携先の拡大も図っていきたいと考えています。

グローバルオファリング

本年3月、当社筆頭株主であるダノン社が保有する当社株式の一部を、グローバルオファリングの形で売り出しを行いました。この売り出しにより、ダノン社の保有持株比率は、発行済株式総数の約20%から6.2%になりました。
また、この株式の売り出しにあわせて、ダノン社との覚書も改定しています。
新たな覚書では、これまで協同して行ってきました合弁事業やプロバイオティクス振興活動および研究活動は継続することで合意いたしました。さらに当社が本格的に進出していない、ヨーロッパ市場におけるダノン社による当社商品の販売など、新しい協働事業の実現可能性を検討することでも合意いたしました。
当社とダノン社は、これまで長期にわたり友好的な関係を構築してきましたが、これからも両社は引き続き、プロバイオティクスの世界的な普及に向けて、良好な関係を継続して行きたいと思います。

今回の株式の売り出しにより、当社株式は流動性の向上が図られると共に、国内および海外の株主の数も増加しました。これからも、事業の継続的な成長を図ると共に、株主の期待にもお応えしていきたいと考えています。
株主還元に関しては、オファリング時に自己株式を360億円取得すると共に、全数を消却し、株主還元の強化を図りました。
そして、平成31年3月期の配当予想については、「安定的な配当を継続して行うことを最優先とする」という考えに基づき、1株について6円増配の年額40円としております。

情報開示に関しても、当社ホームページの「IR情報」の充実を進めていきます。具体的には、海外の投資家が増加していることから、英語版の開示について、「決算短信補足説明資料」以外にも決算資料を増やして行きます。また、これまで業界紙に掲載されていた国内乳製品販売本数の月次情報についても、フェアディスクロージャーの観点から、Webサイトでの開示の準備を進めているところです。

当社は、今後も、より一層魅力的な事業会社になるべく邁進して参る所存ですので、引き続きご指導ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。

株式会社ヤクルト本社
代表取締役社長
根岸 孝成

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