人も地球も健康に Yakult

今後の経営展望について

~2018年(平成30年)3月期 第2四半期 決算説明会 11月10日(抜粋)~

はじめに

根岸でございます。
本日、東京証券取引所におきまして、平成30年3月期第2四半期決算を発表いたしました。
第2四半期決算の内容は、国内および海外での販売本数が順調に実績を積み重ねたことから、増収・増益となりました。
併せて、本日発表しました通期業績予想は、営業利益を期初予想に比べ15億円引き上げ、売上高4,025億円、営業利益415億円といたしました。
今年の全世界での1日当り平均販売本数は、5月から9月まで5か月連続して4千万本を超えています。この勢いを絶やすことなく、これからも全世界でヤクルトファンを増やしていきたいと思っております。

各事業の取り組みについて

国際事業

中国

中国全体での販売本数は、順調に推移しています。この成長の核となっているのは、ヤクルトの市場づくりです。中国における市場づくりは、「拡大と深耕」という2つのポイントを軸に取り組んでいます。市場の拡大に関しては、今年度 新たに6か所の販売拠点を設けました。これにより、中国全体での販売拠点数は41か所となり、カバー人口は7億人を超えました。これからも継続的に市場の拡大を図っていきます。
また、既存市場における市場の深耕も加速しています。それぞれの販売拠点では、店頭でのプロモーション活動を通じ、新たなお客さまづくりを行うと共に、既に納品している量販店以外の地場スーパーや小売店などの開拓にも力を入れることで、販売本数を伸ばしています。
需要が拡大することにより、次の課題は生産体制の強化です。
現在、中国では、6か所目となる工場を 広東省の佛山市(ぶつざんし)に2019年3月の生産を目指し、建設を進めているところです。本日発表した無錫工場 第2工場棟の生産を開始する2019年6月には、中国全体で日産1,340万本の生産体制を予定しています。
中国での事業は、2002年に広州市から始まり、15年が経過しました。しかし、13億人が住む国で、現在のカバー人口は約7億人であり、この7億人の市場での人口比は、ようやく1%程度です。私たちにとって、中国でのヤクルト事業は、まだまだ道半ばです。これからも市場の拡大・深耕を推し進めて行かなければならないと思っております。
一方、事業の拡大と共に、組織体制も大きくなってきました。既に社員だけでも4千名を超えていますが、今後 更に組織の拡大が見込まれます。このため、内部統制の強化と業務の可視化を推し進め、更なる経営品質の向上にも力を入れていきます。

インドネシア

インドネシアの上半期の販売本数の伸びは一桁に留まりました。
この背景には、1月に実施した6%台の価格改定以上に、連日、雨が続いたという天候不順が影響しています。また、最近では、足元の個人消費が若干弱くなっており、一部の大型店舗では、来客数に影響が出ているとの情報もあります。
しかし、販売力の核となるヤクルトレディ(以下YL)数や納品店舗数は着実に増加しています。更に、よりきめ細かい市場づくりをするために、支店の管轄エリアを分割して、下期には新たな支店を10か所設けるなど、販売体制の強化も進めています。
また、お客さまづくりの基本となる、広報活動としてのフィルムショーイング活動や工場見学の活用、更にはYLのスキルアップと意識向上を目指し、毎日ミーティングを行うなど ヤクルトならではの、さまざまな活動を徹底して行なっています。これからも、ロイヤルカスタマーを継続的に増やし続けていきたいと考えています。

ブラジル

ブラジルでは、高いインフレ率と景気の低迷により、消費は伸び悩んできました。このため、当社事業においても、販売本数が連続して、前年を下回るなど、苦戦を強いられています。外部環境は厳しい状況にありますが、このような逆境下において、ブラジルヤクルトでは、基本に立ち返り、「ブラジル国民の健康増進への寄与」という考えを全社で共有し、強固な組織づくりを進めています。
幸い、第2四半期の実質GDP成長率は、個人消費支出が0.7%増と下支えしたことから、前年同期比で0.3%となり、12四半期 続いたマイナス成長をようやく脱しました。消費の回復傾向が見えてきたことから、今後に期待したいと思っています。

メキシコ

今期のメキシコの販売本数は、堅調に推移しています。この背景には、宅配チャネルの基盤強化として、新人YLに対する育成方法の改善実施、店頭チャネルでのルートの合理化などを継続的に推し進めたことが、実績の引き上げに結びついています。
また、歴史の長いメキシコでは、ブランドの価値向上にも力を入れています。その一つに、ユニセフが実施している「子供の健康を守る活動」があります。この活動にヤクルトは提携し、資金提供だけではなく、ユニセフが発行する資料をYLがお客さまにお届けするといった活動を行っています。ヤクルトのお客さまをつくるという営業活動に加え、「社会と共生するヤクルト」という企業づくりを通じて、ブランド価値の向上を図っています。

中東

本年3月から、中東でのヤクルトの販売を開始しました。現在、中東でのビジネス展開は、UAE、オマーン、バーレーン、カタール、クウェートの5か国で行っています。事業開始から間もないために、販売本数は 1日平均1万本台ですが、私たちが考えるヤクルトのグローバル展開という視点では、ようやくアラブ系の方々へヤクルトをお届けできたと考えています。大手量販店を中心に、ヤクルトの露出を推し進め、認知活動を積極的に進めていきます。

医薬品事業

当社の医薬品事業は、がん領域に特化した「スペシャリティーファーマ」を目指して、これまで事業展開を進めてきました。
カンプト、エルプラットという 抗がん剤の浸透を図るうえで、先発薬メーカーとして最も重要視したことは、医療機関に対する治験時の安全性の情報や海外での情報、また日常診療で集積された有害事象の詳細な情報提供を行なうことでした。そして、この情報提供活動を徹底して行なったことにより、当社のがん領域専門MRは、多くの医療機関から高い信頼を得ることとなりました。
当社は、カンプト、エルプラット以外の後発医薬品も取り扱っていますが、いずれも 高い市場シェアを得ることができているのは、その証です。医療機関から高い評価をいただいているMRの強みをいかして、今後も後発医薬品の導入には、前向きに取り組んでいきたいと考えています。

当社のMRに対しては、他社からの注目を得ています。現在、新たな取り組みとして、サノフィ社と共同販促活動を行っています。これは、カンプトを用いた がん化学療法であるFOLFIRI(フォルフィリ)に、サノフィ社の血管新生阻害薬「ザルトラップ®」を併用することを促進するという活動です。大手製薬企業であるサノフィ社は、単独のプロモーションより、がん領域に強いMRを保有する当社と組むことが製品の価値最大化を加速できると判断したため、共同販促という取り組みにつながったのだと考えています。

医薬品業界を取り巻く環境は、国による後発医薬品の使用促進施策の推進や、薬価制度の見直しなどがあり、事業を営む上では、大きな課題はあります。しかし、これまで培ってきた がん領域専門MRという強い販売組織をいかして、更なる後発医薬品の導入や他社とのアライアンスなどを推し進めることで、医薬品事業を推進していきたいと考えています。

国内飲料食品事業

健康志向が高まるにつれて、乳酸菌の働きに対して、数多くの方々が関心を持って頂けるようになってきたことは、非常に嬉しく思っています。商品づくりに関しても、乳業メーカーにとどまらず、他分野からの参入もあり、乳酸菌を新たな付加価値として打ち出した商品が増えています。
このブームともいえる渦中にあって、お客さまに対して最も重要なことは、信頼されるブランドづくりであると考えています。80余年にわたりプロバイオティクスの研究を続け、ひたむきに商品をお届けしてきた企業として、真摯にヤクルトというブランドの価値を伝えていきたいと思います。
昨年よりメディアを通じた広告展開に力を入れ、ブランド価値の向上を目指した結果、評価は販売本数の増加という形で現れています。
今年度も、「科学するヤクルト」、「いい毎日にはヤクルトさんがいる」、「強い菌で強く生きる」というわかりやすい言葉と映像でメッセージを伝えています。更に多くの方が、今一度ヤクルトを手にしてくださるように、継続的にメディアを通じた広告展開には力を入れていきたいと思っています。
また、メーカーとしてのメディア戦略を進める一方で、よりお客さまとの距離が近い、販売会社での活動も活発化しています。

ヤクルトグループには、消費者と直接コミュニケーションができる組織と機能という事業資産があります。その事業資産をいかした地域密着でのヤクルトのファンづくりの活動を全国で行なっています。
今年度は、全国販売会社において、29万人を対象とした「健康教室」や「栄養相談会」を年間1万2千回、20万人を対象とした「出前授業」を年間3千回 開催する計画を立てました。半年を経て、活動は計画通りに進んでいます。

そして、全国の販売現場での活動についても、店頭ではプロモーションスタッフによる、毎月約7千回の販促活動や、宅配におけるYLの価値普及活動を通じて、お客さまの数は着実に増えてきています。これからも引き続き、こうした活動を行なっていきます。
新たな取り組みとしては、宅配チャネルにおいて、より多くのお客さまとの接点づくりをするために、Webを用いた受注システムの導入を一部エリアで開始しました。このシステム導入により、日中は家を留守にしているため、直接お会いできないお客さまからのご注文を24時間受け付けられることになります。消費者目線でもWebを介した注文システムは、利便性が高いと思いますので、できるだけ早く全国展開したいと考えています。

また、店頭チャネルにおきましては、「シンバイオティクス ヤクルトW」を10月24日から全国のセブンイレブンで、そして11月27日からは、全国のコンビニエンスストアやスーパーマーケットなどで発売します。この商品は、乳酸菌シロタ株と腸内のビフィズス菌を増やすガラクトオリゴ糖を一緒に摂ることができるパーソナルタイプの乳製品乳酸菌飲料です。CVSチャネルにおける、ヤクルトのプレゼンス向上を狙っていきたいと考えています。

むすび

昨年度、当社はネイチャーとの協同により、「中央研究所オープニングカンファレンス」において「ネイチャーカフェ」を開催いたしました。ネイチャーカフェとは、ネイチャーの世界的なネットワークにより、様々な分野をテーマに、トップクラスの科学者が語り合うイベントです。
当社は、ネイチャーと協同して活動していくことを、国内外におけるブランドイメージの向上と世界的な研究者との接点づくりを行なっていくうえで、重要なことであると考えています。このため、本年10月13日に、ロンドンのネイチャー本社において「健康と疾患における腸内細菌叢の役割」をテーマに、第2回となるネイチャーカフェを開催いたしました。

私どもヤクルトは、世界中でのヤクルトの愛飲者づくりの活動と平行して、世界中の研究者に対しても プロバイオティクスに関する情報発信を行い、「科学するヤクルト」の理解促進をより一層図ってまいります。

ご清聴ありがとうございました。

株式会社ヤクルト本社
代表取締役社長
根岸 孝成

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