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今後の経営展望について

~2016年(平成28年)3月期 通期 決算説明会 5月10日(抜粋)~

はじめに

根岸でございます。
まずは、先月発生しました熊本地震により、亡くなられた方々に対しまして、謹んで哀悼の意を表します。また、被災されました数多くの方に対しまして、心よりお見舞い申し上げますと共に、一刻も早い復興を願うばかりです。

さて、本日、東京証券取引所におきまして、2016年3月期決算を発表いたしました。決算の内容は、増収増益となり、売上高および各段階利益は、過去最高となりました。

併せて、2017年3月期の業績予想も本日発表いたしました。2017年3月期は、当社の中長期計画である「ヤクルトビジョン2020」の第2フェーズのゴールと重なります。本日発表した2017年3月期の業績予想は、目標とした連結売上高4,200億円、営業利益430億円と比べ、事業進捗のずれに加え為替などの前提条件の違いなどがあるために、差異が生じています。今年度が終了した時点で、改めて第2フェーズの評価分析を行うと共に、「ヤクルトビジョン2020」のゴールである2021年3月期の目標とした売上高5,000億円、営業利益500億円についても、見直しを行う予定です。少しでも前倒しで達成すべく、事業を推し進めていきたいと考えております。

今期の取り組みについて

国際事業

本日発表しました国際事業の通期予想は、円高による為替影響により、売上高は前年並み、営業利益については減益という見通しとしています。しかしながら、為替の影響を除外した現地通貨ベースでは、売上高、営業利益ともに増収・増益を見込んでおります。1日平均の販売数量についても、昨年度は110万本増やしましたが、今年度計画においては、昨年度を上回る本数の増加を見込んでいます。
そして、持分法会社を含む海外事業所合計では、1日平均販売数量2,750万本、即ち、年間トータルで100億本超えの目標にチャレンジしていきたいと思っています。
それでは、地域別に今期の取り組みについて説明いたします。

アジア・オセアニア地域

ほとんどが新興国であるが故に、経済の変動が生じやすい市場ですが、中国やインドなどの人口大国もあり、当社事業においては、最も販売数量の成長が見込まれるエリアであります。

そのなかでも、めざましい事業成長を遂げている事業所として「インドネシア」があります。当社独自の販売チャネルである宅配部門では、ヤクルトレディのお客様に対するコミュニケーション能力を、研修を通じて高めることにより、1人当りの生産性を上げること。併せてヤクルトレディの数を増やすこと。この2つの点を徹底して行ってきたことが成長に結びついています。宅配部門の成長により、ヤクルトのブランド価値も向上し、相乗効果として店頭部門での実績向上にも結びついています。経済環境は決して良いとはいえませんが、自分たちの販売力・組織力を高めることが事業成長につながっています。

アジアの事業所は進出した時期も違えば、市場創造のステージもそれぞれ異なりますが、私はインドネシア以外の国でもこのような成長ストーリーを描いていきたいと考えております。宅配チャネルを核とした事業展開を推し進めることで、第2、第3のインドネシアが必ず現れてくると確信しています。

そして、皆様から最も高い関心を頂いている中国です。
中国におけるヤクルト事業は、これからも成長を続けます。
私どもは、2002年に広州での営業開始以来、店頭チャネルを先行して事業展開を推し進め、市場における深耕と拡大を進めてきました。今年度は、6月に新たな販売拠点を雲南省昆明市と広西チワン族自治区南寧市に開設いたします。
これからも、毎年複数の販売拠点を新設し、販売エリアの拡大を推し進めていきます。

1日当りの販売数量が増え、母数が大きくなってきていますが、今年度も中国全体では2桁成長を目指します。中国市場は「上海」、「北京」、「広州」、「その他中国」の4つのエリアに区分していますが、成長を牽引するのは、「その他中国」です。「その他中国」では、販売拠点での商品供給エリアの拡大により、マーケティング人口が増え、現在は5億人を上回る巨大市場であります。この地域では、現在1日当り約200万本の販売実績がありますが、浸透率を表す人口比は、他の地域に比べまだまだ低い水準であります。広州、上海、北京などの、先行する他の地域をベンチマークとして、販売数量の拡大を進めていきます。

米州地域

米州地域は、人口大国アメリカと進出が早かったブラジル、メキシコの3カ国が市場です。
アメリカでの本格的な事業展開は、2007年9月にカリフォルニア州より開始しました。これまでは主に西海岸の6州において、店頭チャネルを通じてお客様づくりの活動を行ってきました。今年度は、既存市場での一定の認知が進んだことから、隣接する複数の州へ進出し、販売地域の拡大を図っていきます。

ブラジルは経済が低迷し、加えて政治の混乱が経済回復に影響を及ぼしています。このため、当社事業を取り巻く環境は、今後も厳しいことが予想されますが、既存市場においては、更なる商品の複合化を視野に入れながら、市場の深耕を推し進めていきます。そしてこれまで進めてきた市場再構築については、その対象エリアをサンパウロ州以外にも拡大し、深耕と拡大という両輪で販売力の強化を図っていきます。

メキシコは、米州における収益面での中心的存在であり、昨年度も堅調に販売実績を積み重ねています。宅配チャネルでは、既存市場を中心に、きめの細かい市場づくりを継続実施し、お客様への積極的なアプローチを進めていきます。また店頭チャネルでは、組織体制の強化を推し進めると共に、営業社員の活動力の強化を継続していきます。これらの活動を通じ、創業以来一度も前年実績を下回ったことがないという販売数量の持続的拡大を目指していきます。

欧州地域

1994年にオランダでの営業開始から20年余りが経過しました。欧州では、現在全てのプロバイオティクス商品が、エフサ(EFSA)によるヘルスクレームの認証を得られていないという状況にあります。しかし、長年の活動を通じて得られたロイヤルユーザーにより、販売数量の減少を最小限に抑えることができています。ヘルスクレーム取得に向けた学術、広報活動を今後も継続すると共に、北欧や東欧への新規進出も視野に入れ、事業展開を進めていきます。

医薬品事業

医薬品業界を取り巻く環境は大きく変化しております。なかでも、医療保険財政の改善を目的とした、後発医薬品の使用促進策による普及拡大は、医薬品市場において大きな変革をもたらしています。
当社医薬品事業においても、昨年度の売上高は、前年を上回りましたが、主力のエルプラットは後発品への切り替えが加速し、苦戦を強いられました。更に、本年度は薬価改定が実施され、エルプラットは通常改定に加え新薬創出加算戻しにより16.4%の大幅薬価引下げとなりました。

今期の通期予想については、厳しい見通しをたてておりますが、引き続きコア商品であるエルプラットの大腸がん領域・膵がん領域での基本治療の磐石化、昨年適応追加となった胃がんでの市場の早期浸透を図ると共に、後発医薬品についても市場シェアナンバーワンを維持する活動に注力していきます。

医薬品業界を取り巻く急激な環境変化に対応ができなければ、事業そのもののあり方も問われるところですが、中期的には新たな新薬ならびに後発医薬品の導入や品目あるいは疾患領域での戦略的提携なども視野に入れて、医薬品事業の回復・成長を目指していきたいと考えております。

国内飲料食品事業

近年、健康機能性訴求型のヨーグルト市場は、目覚ましい勢いで成長を遂げています。製品に使用されている乳酸菌に関する情報は、雑誌の特集記事やテレビ番組でも取り上げられ、既に一過性のブームではなくなっています。健康のために乳酸菌を摂取するということは、多くの人々にとって、当たり前のことになってきています。

当社は、プロバイオティクスのパイオニアとして、80年にわたり事業を営んできました。ヤクルトに代表される乳酸菌シロタ株は、安全安心で豊富なエビデンスを持つ、選ばれた乳酸菌です。

今一度改めて企業メッセージの発信を強化し、企業価値の向上ならびに販売活動のバックアップを強化していきます。単年度で成果を導き出すことが難しければ、複数年かけてでもやりきりたいと思っております。今年度は、当社の強みの象徴である「ヤクルト400」・「ヤクルトレディ」・「研究開発技術力」の広告展開を、ヤクルト広告「3本の矢」とし、3つの素材によるコミュニケーションの連動、大規模なマーケティング展開を行い、お客様の「ヤクルト」に対する存在感を高めていきたいと考えております。
また、グローバルブランドである「ディズニー」とのタイアップは、基幹商品「ジョア」・「Newヤクルト」の鮮度アップにつながっていることから、今年度も引き続き実施します。ジョア、Newヤクルトに対するTV広告を集中的に行い、販売環境づくりを推し進めていきます。

そして、新たな市場創造へのチャレンジとして、CVSマーケット攻略も推し進めます。「Newヤクルト」6本パックは、昨年10月から関東エリアで導入を開始し、徐々に販売地域を拡大してきました。実績も好調であることから、本年4月から全国展開を推し進めているところです。
更に、セブンイレブンとの協業商品として、パーソナルユースをイメージした商品「毎日飲むヤクルト」は、昨年11月から首都圏エリアで限定発売を開始しました。お客様からの評判も良いことから、セブンイレブンの推奨品として、今月から全国の店舗での発売を開始いたしました。
国内においては、これからもさまざまな角度からヤクルトブランドの活性をあげる取り組みを行っていきたいと考えております。

ご清聴ありがとうございました。

株式会社ヤクルト本社
代表取締役社長 COO
根岸 孝成

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