~2010年3月期 通期 決算説明会 5月14日 (抜粋)~
はじめに
本日、東京証券取引所におきまして、平成22年3月期決算を発表させていただきました。
2008年後半からの世界同時不況と、新型インフルエンザの世界的流行のなか、昨年度、当社は愛飲者の拡大に地道な努力をしてまいりました。しかしながら、為替が円高に推移したことから、決算は、皆様の期待にお応えできたかどうか、気にかかるところです。
創業75周年を迎えての取り組み
さて、今年は、創業75周年の節目の年にあたります。そこで、世界に広がるヤクルトグループの従事者が、一丸となって、活性化策に取り組み、単月であっても、全世界の乳製品出荷本数、1日当たり3千万本の達成を目指してまいります。
今期の国内飲料食品事業の計画について
国内乳製品販売目標
全世界の乳製品出荷本数一日当たり3千万本を達成するために、国内では単月での乳製品一日平均1000万本/日に、ぜひチャレンジしたいと思います。
また、この3月、5年ぶりに、ビフィズス菌飲料「ミルミル」を復活させ、市場に投入いたしました。4月に入っても販売は好調を持続していることから、この「ミルミル」のヒットをきっかけにして、今年度は、「国内乳製品事業の飛躍の年」にしたいと考えております。
国内の近代化
以前からお話ししております「国内の近代化」についてですが、すこぶる順調に進んでいることをご報告しておきます。
「組織の近代化」は、この1年で、販売会社数でみると、124社から112社に統合いたしました。まもなく100社になっていくことでしょう。もちろん、数を減らせばよいというわけではなく、その中身が大切であります。
そこで、「機能の近代化」のために、「販売会社事務の委託促進による事務部門の効率化」ならびに、「物流の共同化や地域最適な物流機能の検討」等を積極的に図っております。
「工場再編」も、西日本地域の中心的役割を担うものとして、兵庫県三木市に新工場の建設を進めてまいります。これは、今年度後半には、着手できそうです。
これら一連の「国内の近代化」は、一層のスピードアップを図っていく所存でおります。
今期の化粧品事業の計画について
化粧品事業については、中長期的に300億円、短期的には100億円の年間売上高を目指した取り組みを行ってまいります。今年度からは、販売をオープンテリトリーとし、またヤクルト本社が、お客さまとの間に新たな販路を、直接、構築することを推し進めて参ります。インターネット通販、TVショッピング、店舗販売、さらには海外での販売などにも、積極的にチャレンジしていきたいと考えております。
今期の医薬品事業の計画について
医薬品事業については、中長期的には売上高500億円、短期的には総売上高400億円の達成を目標としてまいります。その為に、今年度は、抗がん剤「エルプラット」のさらなる市場拡大を図ってまいります。
今年の4月の薬価改正で、「エルプラット」は、新薬創出加算制度の対象品となったこともあり、ごくわずかな薬価切り下げにとどまりました。この薬価維持のためにも、早期の適応症追加の可能性をにらみながら、胃がんの第Ⅲ相臨床試験を推進してまいります。そして、昨年8月に承認を得た「エルプラット」のアジュバント療法の普及については、その手ごたえが、日々、確実なものとなっており、できるだけ多くの患者さんに、「がんの治癒(ちゆ)」を、もたらすことができるように推進していきます。更に、夏頃をめどに、「エルプラット」の「ゼロックス(XELOX)療法」による「アジュバント療法の申請」も進めていく考えです。
また、昨年度、協和発酵キリンから継承した、「カンプト」や「エルプラット」と一緒に使用する白血球減少症治療薬「ノイアップ」は、当面、継承時(けいしょうじ)の実績を維持し、下期から攻勢をかける計画にしております。
国際事業について
中国
昨年度は、単年度で黒字転換し、営業利益で10億円以上は確保できました。
中国地域の拡大は順調で、先月から、遼寧省(りょうねいしょう)および福建省(ふっけんしょう)において新たな支店を設け、ヤクルトの販売を開始いたしました。これで、中国大陸沿岸部の主要都市での販売体制が整うと共に、東北部での販売拠点の確保ができました。
当面は、量販店による販売網の整備を急ぎますが、私どもの特徴は、宅配にあります。広州、上海、北京における宅配チャネルの確立と、その他の都市への拡大が重点課題です。
また、販売数量の増大に対応するべく、来年の春には、天津工場が稼働します。これで中国での生産体制、日産300万本ができ上がります。
その他のアジア・オセアニア
香港では、新栄養表示法の施行に伴い、ヤクルトに含まれる砂糖の含有量についてマスコミによる報道がなされ、販売数量に影響が出ました。今後は、ライトタイプの商品導入などを行うことで、対応を図っていきます。
一方、インドネシアをはじめとした他のアジア諸国は、未販売地域への進出や、既存販売地区の、きめ細かな対応を図ることで、まだまだ販売数量を拡大することができると考えております。
アメリカ
アメリカでの事業展開は、2007年のカリフォルニア州での本格展開から3年目を迎えます。現在は、全米6州で販売しております。納品店舗数も5千店を超えてきました。この販売数量の増加に伴い、合衆国の西海岸で、工場用地の確保を急いでいます。計画では、メイドインUSAのヤクルトが誕生するのは、2012年の予定です。
メキシコ
昨年、国内総生産の成長率が、戦後最大の下げ幅となり、不況におちいりました。そこで、主婦の雇用促進の意味から、「ヤクルトレデイの採用」を積極的に進めております。
その効果もあり、1月、2月は、天候不順の影響で、販売実績は前年割れをしましたが、3月は、2月の値上げにもかかわらず、前年を上回ってきています。
ヨーロッパ
今期は、景気・消費回復に備え、積極策による基盤の再構築をはかり、数量ベースでは、前年を上回る計画を立てております。確かにギリシャ危機、アイスランド火山の噴火、ヘルスクレーム問題など、EU全体は、消費に影響を与える問題が山積していますが、ここ数年間の地道な販促活動が、功を奏し、今年は、下げ止まりが期待できそうです。
おわりに
最後に、冒頭申し上げましたとおり、本年はヤクルト創業75周年であります。そこで、今年度の配当につきましても、株主の皆様の日頃のご支援に対する感謝の意をこめて、年額20円の普通配当に加えて、平成23年3月期末において1株当り「2円」の記念配当を実施し、普通配当と合わせた1株当たりの配当金額を年額22円とすることを予定しております。
また、今年度、研究開発投資では、中央研究所の増改築を進める一方、国内外において「ヤクルトの飲用試験」、また、医薬品事業においては、抗がん剤の第Ⅲ相臨床試験やグローバル・スタディの推進を図り、その結果として、各種エビデンス(科学的根拠)を積み上げてまいります。さらに、販促投資では、飲用意欲を喚起するような広告投下などの大胆かつ、的(まと)を得た実施を進めていきます。
そして、何より、この節目の年を契機として、グループ従事者が一丸となって再度、「原点回帰」を図り、その証(あかし)の一つとして、全世界で1日平均3千万本の達成を目指してまいります。ただし、3千万本は、4千万本、5千万本に向けての一つの通過点にすぎません。
ぜひとも、ヤクルトグループの成長に、皆様方のご理解と、ご協力を、この場をお借りして、お願い申し上げます。これをもちまして、私のご挨拶といたします。ありがとうございました。
株式会社ヤクルト本社
代表取締役社長
堀 澄也