ヤクルトの創始者で医学博士の代田 稔(しろた みのる)が京都帝国大学(現在の京都大学)で医学の道を歩みだしたのは1921年。その当時の日本はまだ豊かとはいえず、衛生状態の悪さから感染症で命を落とす子どもたちが数多くいました。
そんな現実に胸を痛めていた医学生時代の代田は、病気にかかってから治療するのではなく、病気にかからないようにする「予防医学」を志し、微生物研究の道に入りました。
そこで乳酸菌が腸の中の悪い菌を抑えることを発見、これをさらに強化培養することに世界で初めて成功しました。それが、今日「乳酸菌 シロタ株」と呼ばれる「ラクトバチルス カゼイ シロタ株」です。
その後、代田は、生きて腸内に到達し、有用な働きをする「乳酸菌 シロタ株」を、一人でも多くの人々に摂取してもらうため、有志とともに安価でおいしい乳酸菌飲料として製品化しました。こうして1935年、乳酸菌飲料「ヤクルト」が誕生しました。
世界の人々の健康を守りたい。代田 稔の情熱と発想、飽くなき探究心は、今も、脈々と受け継がれています。
ヤクルトの願いは、世界中の人々に健康で楽しい毎日を過ごしてもらうこと。
健康に役立つ商品や、サステナブルな社会づくりに貢献するさまざまな取り組みで、それを実現していきます。
このコミュニケーションブックでは、ヤクルトの事業活動や、SDGs※1への貢献、ヤクルトの事業に関わりが深く特に重要と考える3つの領域「健康」「地域社会」「環境」における取り組み、世界各地での特色ある取り組みを取りあげています。
「人も地球も健康に」をスローガンとして、健康に役立つ商品の開発や、持続可能な社会づくりに貢献する取り組みを行ってきたヤクルトは、企業活動そのものがCSR※2活動であり、SDGsの各目標への貢献に深く関連しています。SDGsの理念である「誰も置き去りにしない」は、私たちの原点である代田イズム(上記参照)につながるものがあると考えています。
今後も、企業として成長し、持続可能な社会の実現を達成するためには、お客さまをはじめとするステークホルダーの皆さまと密にコミュニケーションをとり、CSR活動をより発展させていくことが大切です。
世界中にひろがるヤクルトのCSR活動とその想いを、このコミュニケーションブックを通じて感じていただけましたら幸いです。
代表取締役社長
※1 SDGs…Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標 詳しくはこちら
※2 CSR…Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任
世界40の国と地域に健康をお届けしているヤクルトグループ。その特徴を数字でご紹介します。
今、地球は経済や社会、環境の面でさまざまな課題を抱えています。現在のまま人口増加・消費が進むと、2030年には地球が2つ必要になるといわれています。
2015年9月に国連サミットで採択されたSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は、地球の限界を超えないよう、また、貧困をなくし、「誰一人取り残さない」社会の実現を目指すものです。2030年までに達成すべき17の目標と、それらを実現するための具体的な169のターゲットを設定しています。
SDGs達成のためには、各国・地域の政府だけでなく企業、市民社会などが協力することが不可欠です。
ヤクルトグループは企業理念において、事業活動を通じ「世界の人々の健康に貢献する」ことを目指しています。また、人が健康であるためには、人だけではなく周りの水、土壌、大気などすべての地球環境、動植物が健康でなければならないと考え「人も地球も健康に」をコーポレートスローガンとして制定しています。さらに「地域社会の問題解決に貢献すること」「地域社会からの『信頼』を築きあげること」を事業活動のベースにおいてきました。
これらのことから、「健康」「地域社会」「環境」をCSR重点3領域としています。
CSR重点3領域とSDGsの各目標との関わりは左の図のとおりです。
2018年12月、ヤクルト本社は第2回「ジャパンSDGsアワード」で特別賞「SDGsパートナーシップ賞」を受賞しました。
乳酸菌飲料の生産・販売を通じ、長きにわたり世界各地で人々の健康的な生活の実現に貢献していることや、ヤクルトレディによる宅配を、健康情報の提供等を行いながら商品をお届けする日本発のモデルとして海外へ展開し、健康で楽しい生活づくり、健康意識の向上、ひいては海外の就労や女性の活躍等にも貢献していることが評価されました。
貢献するSDGs
あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する
ヤクルト本社の支店や各地域の販売会社の社員が小学校などに出向き、腸の大切さや「いいウンチ」を出すための生活習慣について、模型などを活用して、わかりやすく説明する「出前授業」を行っています。
大人向けには、各地域の販売会社社員等が講師となり、センター(ヤクルトレディの販売拠点)や公共施設等を利用して、腸の大切さやプロバイオティクス、季節に流行する疾患等、幅広いテーマで「健康教室」を開催しています。
出前授業(奈良ヤクルト販売)
健康教室(ブラジルヤクルト)
貢献するSDGs
ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る
すべての人々のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用およびディーセント・ワークを推進する
ヤクルトといえば、商品を自宅や勤務先に届けてくれる「ヤクルトレディ」。1963年にスタートしたこの独自のシステムは、海外にも広がり、事業を拡大する大きな原動力になっています。
女性の社会進出が進んでいない地域においても、きめ細かなフォローで就労を後押し。各地で、イキイキと働くヤクルトレディの姿が見られます。
ヤクルトレディ(メキシコヤクルト)
貢献するSDGs
持続可能な消費と生産のパターンを確保する
海洋プラスチックごみ、温暖化、資源の枯渇などが世界的な問題になっています。そこでヤクルトでは、プラスチック容器包装の資源循環を推進する取り組みを行っています。 2019年1月には、「プラスチック資源循環アクション宣言」を発表。2025年までに、環境に配慮した容器包装の基礎技術を確立して植物由来の成分や分解されやすい素材への置き換えに着手し、2030年までに、最大限の置き換えを図ることを目指しています。
貢献するSDGs
気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る
本社工場やボトリング会社では、環境に配慮した設備の導入や、照明のLED化、効率の良い生産などでCO2削減を推進しています。クリーンで再生可能なエネルギーである太陽光発電も積極的に取り入れています。
さらに、毎年5月に工場など全国14か所で植樹活動を実施しています。
工場屋上に設置された太陽光発電
(岡山和気ヤクルト工場)
植樹活動(兵庫三木工場)
企業理念「私たちは、生命科学の追究を基盤として、世界の人々の健康で楽しい生活づくりに貢献します」の実現に向けて、
研究・開発から皆さまのお手元に商品が届くまで、さまざまな活動に取り組んでいます。
ヤクルトは、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同で、宇宙環境における乳酸菌のはたらきを検証する「ヤクルト宇宙プロジェクト“YAKULT SPACE DISCOVERY”」を実施しています。2018年度は、宇宙環境で乳酸菌 シロタ株を長期保管してもプロバイオティクス機能が維持されることが確認できました。
「ヤクルトグループCSR調達方針」に沿って、取引先と連携・協力しながら、人権、労働、環境、腐敗防止などに配慮した調達を推進しています。2018年度は、取引先103社に対してCSR調達アンケートを実施。各社のCSR調達の取り組み状況を把握することができました。アンケート結果は回答各社にフィードバックしており、各社のCSRの意識を高め、自主的な取り組みを促しています。
富士裾野工場など5工場で、ヤクルト類や「ジョア」の容器を製造する成形機を省エネタイプに切り替えました。
電動成形機(岡山和気ヤクルト工場)
ヤクルトでは、他社メーカーとの共同配送を推進し、物流効率化とCO2排出量削減を図っています。2018年度は中部エリア3か所において新たに他社メーカーとの共同配送を開始しました。
健康情報をお届けする「出前授業」「健康教室」(➡詳しくはこちら)の活動が食育活動として評価され、2019年4月に一般社団法人日本食育学会「食育推進企業・団体」に認定されました。
健康教室(インドネシアヤクルト)