科学の

溶連菌とは?

微生物疾患ウイルス

溶連菌とは溶血性連鎖球菌の略で、咽頭炎や扁桃炎、発疹などを起こすことで知られる細菌の一種です。溶連菌感染症は早期診断と治療が重要です。自己判断で対応せず、症状が現れた場合は速やかに医療機関を受診してください。

監修
KARADA内科クリニック 医学博士 五反田院長 /日本感染症学会専門医 佐藤昭裕 先生

溶連菌感染症とは?

溶連菌感染症とは、溶連菌が原因で発症する感染症の総称です。溶連菌にはさまざまな種類があるのですが、一般的に溶連菌感染症と呼ばれるものはほとんどがA群溶血性連鎖球菌によるものです。子どもがかかりやすい傾向にありますが大人も感染します。

一年をとおして発生する感染症ですが、冬から春にかけて流行することが多く、感染するとのどの痛み、発熱、皮膚の発疹、「イチゴ舌」と呼ばれる舌が赤い状態などの症状が出ます。また、まれに劇症型溶連菌感染症(STSS)と呼ばれる重篤な皮膚感染症を引き起こすことがあります。これが俗に言う人食いバクテリアです。

近年、溶連菌に感染する
人が増えている

近年、溶連菌感染症や劇症型溶連菌感染症の報告数は増加傾向にあります。溶連菌感染症は2023年10月以降に過去10年で最大規模の流行が起こりましたが、2024年はさらに増加しています。

劇症型溶連菌感染症も2024年6月時点で、統計を取り始めて以来、過去最多の発生報告数となっています。

溶連菌感染症の
予防とワクチン

溶連菌感染症は主に飛沫感染や接触感染で感染が広がります。そのため、溶連菌感染症を予防するには感染者と濃厚接触を避けることが重要です。傷口から感染する可能性もあるので、靴ずれ程度の小さな傷でもきちんと消毒するようにしましょう。

手洗いやマスクの装着といった一般的な感染症予防策も有効です。アルコール消毒や咳エチケットも徹底しましょう。

溶連菌に効くワクチンは今のところ開発されていません。溶連菌はさまざまな菌種があるため繰り返しかかることも多い感染症ですので、日常的に衛生管理に気をつけて予防していきましょう。

溶連菌感染症の治療

溶連菌感染症は早期診断と治療が重要な病気です。自然に治ることもありますが、重症化してしまうこともあるため、自己判断は避けましょう。症状が現れた際はすぐに医療機関を受診してください。

溶連菌感染症の治療には抗生物質、主にペニシリン系薬剤が使われます。医師の指示に従って、処方された薬の量と回数を守り、必ず最後まで服用することが重要です。

症状が良くなったからと自己判断で服用を中断すると、細菌を退治しきれず、症状が再発したり、耐性菌が生き残ってさらに強くなってしまったりする可能性があります。合併症を引き起こすリスクもあるため、医師の指示に従って治療を行いましょう。

気をつけるべき合併症

溶連菌感染症の合併症で代表的なものが、リウマチ熱や急性糸球体腎炎です。

リウマチ熱は関節痛や発熱、心臓への影響を及ぼす全身性の炎症反応であり、後遺症として心臓弁膜症を起こすこともあります。急性糸球体腎炎は尿の異常やむくみを伴う腎臓の炎症です。

また、近年、増加傾向にある劇症型溶連菌感染症にも注意が必要です。子どもよりも大人に多く発症する傾向があり、致死率も比較的高く、人食いバクテリアという恐ろしい呼び名で話題になりました。
劇症型溶連菌感染症の患者数は一般的な溶連菌感染症の患者数に対して3%ほどの割合で決して多くはありませんが、劇症型溶連菌感染症になる原因はまだわかっていないことが多いため、発熱に加えて手足などの痛み、発赤、腫脹を感じたら、早めに医療機関で検査や診断を受けるようにしましょう。

登校や出社は
していいの?

公益財団法人日本小児科学会の「学校、幼稚園、認定こども園、保育所において予防すべき感染症の解説(2024年5月改訂版)」には下記のように記載されています。

溶連菌感染症に感染した場合、適切な抗菌薬による治療開始後 24 時間以内に感染力はなくなるため、それ以降、登校(園)は可能である。

  • “学校、幼稚園、認定こども園、保育所において予防すべき感染症の解説(2024年5月改訂版)”. 公益財団法人日本小児科学会, 2024, 25p.

出社についても、マスクを装着の上、治療を開始してから24時間後以降であれば問題ないと考えられます。