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記憶・物忘れとは?

脳幹大脳辺縁系大脳皮質海馬大脳基底核小脳短期記憶長期記憶記憶障害

ヒトの脳にはさまざまな情報を覚え、脳内に保管し、必要な時に思い出す『記憶』という機能があります。
この「必要な時に思い出す」ができなくなることを『物忘れ』と言いますが加齢による記憶力の減退から起こることが多く、年齢を重ねると誰もが物忘れをしやすくなります。
物忘れは病気ではありませんが、病気が原因でひどく物忘れをすることもあるため、注意が必要です。

記憶の仕組み

ヒトの脳には大きく分けて、生きるための基本的な働きを司る『脳幹』と、感情を司る『大脳辺縁系』、そして五感や運動、思考など高度な機能を司る『大脳皮質』の3つの部分があります。また、脳内にはニューロンと呼ばれる神経細胞が張り巡らされていて、これが情報伝達の役割を担っています。

大脳辺縁系にある『海馬』は記憶の司令塔と言われており、タツノオトシゴのような形をしているのが特徴で、左右にそれぞれ一つずつあります。ヒトが何かを覚えるとき、新しい記憶は短期記憶として海馬に一時的に保管されます。その後、重要な記憶だと判断された情報が大脳皮質に蓄積され、長期記憶になると言われています。

記憶の仕組み

記憶には、知識を頭で覚える際の記憶と、自転車の乗り方など、体で覚える記憶があります。頭で覚える記憶は海馬の担当ですが、体で覚える記憶は動きを覚える大脳基底核や小脳の担当です。『記憶』はその種類によって、脳の中でより適した場所に保存されているのです。

なぜ忘れてしまうの?

重要な情報だと判断されて長期記憶となった記憶であっても、思い出して活用する機会がないとだんだん薄れて忘れられてしまいます。脳内に似た記憶があるせいで思い出しづらくなる、というのも忘れることの一種です。

また、記憶力のピークは20代だと言われていて、年齢を重ねるにつれて減退していきます。物忘れは40代後半から50代にかけて悪化することが多いようです。

一般的に、年を重ねるにつれて、神経の伝達速度が遅くなったり、脳の神経細胞が減ったり、脳の萎縮が起きたりするため、これらが記憶力の低下につながっていると考えられています。

認知症との違いは?

物忘れには、加齢によって起きるものと認知症によって起きるものがあります。

加齢による物忘れは、有名人の名前や昨日の夕飯が思い出せなかったり、物を置き忘れたりするのがよくある症状です。有名人の名前は思い出せないけれど、歌手なのか俳優なのか、何のドラマに出ていたかなどは覚えていますし、夕飯を食べたこと自体は覚えています。記憶の一部を忘れるのが加齢による物忘れの特徴です。
大抵の場合はヒントをもらうことで思い出せます。物忘れしている自覚もあるため、日常生活には支障がないことがほとんどです。

認知症の場合は脳の機能が低下し続けるため、認知症による物忘れは日常生活に支障が出ることも。物忘れの自覚がないのが認知症による物忘れの特徴だと言われています。認知症でも、初期の段階は加齢による物忘れと見分けがつきにくい場合がありますから、気になる場合は病院を受診してみると良いでしょう。

記憶の仕組み

記憶力と睡眠、
ストレスとの関係性

何かを学習した後に眠ると、睡眠中の脳内では覚えたことに関する神経回路が再度活性化して記憶が強化されます。逆に睡眠不足だと記憶が正しく定着しないという研究結果も。
また、ストレスが海馬にダメージを与えて記憶障害を起こすということもわかっています。

十分な睡眠を取ることや、ストレスをためないことが記憶の強化や記憶力を低下させないことにもつながるようです。記憶力を低下させないためには適度な運動や栄養バランスの取れた食事、脳トレなどを行い、すこやかな生活を送ることが重要です。