からだの

脳腸相関とは?

迷走神経腸内細菌腸内フローラIBS過敏性腸症候群ストレス

ストレスは私たちの健康に大きな影響を与えることがあります。
例えば、試験や大切な会議など、緊張するとおなかの調子が悪くなる、といった経験をしたことはありませんか?
これは脳と腸が互いに影響を与え合う『脳腸相関』によるものです。

脳と腸は
情報交換している?!

腸は第二の脳とも呼ばれ、脳からの指令なしに独立して活動することができ、感知したさまざまな情報を処理して脳へ伝達していることがわかってきました。脳と腸は、免疫系や内分泌系、神経系といった腸に備わっている機能を介して情報交換を行っており、腸から脳への情報伝達ルートとして注目されているのが迷走神経です。
迷走神経とは脳神経の中で最も長い神経で、複雑な神経経路をつくってさまざまな器官に広がっていることから「迷走」の名がついています。
脳が腸に送る情報量よりも、腸から脳に送る情報量の方が多いと考えられています。

脳と超を結ぶ迷走神経

脳腸相関から
脳-腸-微生物相関へ

マウスを使った研究によって、脳腸相関には腸にすみついている微生物、腸内細菌が大きくかかわっていることがわかってきました。
腸内細菌を持たない無菌マウスはストレスに過敏な傾向があるという基礎研究を基にした、無菌マウスに腸内細菌を移植するという試験では、マウスの多動や不安行動が正常化するという報告もあります。

腸内に多くの微生物が菌種ごとに塊となって生息しており、この集団は「腸内細菌叢」と呼ばれ、またお花畑のようにも見えることから「腸内フローラ」とも言われます。
腸内フローラのバランスが乱れることがうつ病の発症に関与する可能性があることがわかっており、うつ病患者では健常者と比べて腸内のビフィズス菌などの良い菌が少ないという研究結果も出ています。
また、うつ病の人が合併することの多い「IBS(過敏性腸症候群)」は、一部の腸内細菌が関わっていると考えられています。

腸からストレスに
アプローチするという
考え方

「IBS(過敏性腸症候群)」の患者は、脳が感じたストレスに対して腸が過剰に反応し、さらにその刺激が脳に伝わることで苦痛や不安が増していることがわかっています。このIBSの治療にもプロバイオティクスが効果的だった、という研究もあります。

普段は健康な人でも、一時的なストレスによって心身の不調を招くことがあります。大切な試験やプレゼン、いつもと違う環境など、一時的なストレスに対して思うようなパフォーマンスを発揮できなかった経験は、誰にでも一度はあるのではないでしょうか。

このような、ストレスによる不調への対処法は、以前は脳を起点としたアプローチを中心に考えられていましたが、脳腸相関の研究が進んだことから、今では腸からストレスにアプローチする、という考え方が注目されています。

脳と腸が互いに影響を及ぼし合う『脳腸相関』を利用して、腸からストレスにアプローチするという考え方は、今後もさらに研究が進んでいくことでしょう。

食生活に手軽に取り入れることができるストレス対策、プロバイオティクスを積極的に活用して、ストレスに負けない体を手に入れたいですね。