栄養の

乳酸とは?

グリコーゲン乳酸シャトル無酸素運動有酸素運動早筋遅筋マイオカイン

乳酸とは、糖類が分解されてできる生成物のことです。
ヒトが運動をする際、筋肉が糖を分解してエネルギーを作る時にも乳酸は生成されますが乳酸菌もその名の通り腸の中で糖を分解する際に乳酸を生成することで知られています。この乳酸の役割をご説明します。

乳酸菌によってできる
『乳酸』

乳酸菌は糖を分解して乳酸を作り出します。この乳酸が酸味を生み出し、食品を腐りにくくしたり、味に変化を与えたりします。このしくみは乳酸発酵と呼ばれていて、ヨーグルトや味噌、醤油や漬物などの発酵食品が作られる際に活用されています。

乳酸菌は、ヒトの腸の中にもすんでいて、乳酸菌が作り出す乳酸は食べたものの消化や吸収を助けたり、悪い菌が増殖することを抑えたりします。

乳酸菌は酸素を嫌う嫌気性の微生物であり、酸素を使わずに糖を分解しますが、運動で筋肉が乳酸を作る環境にも、この「無酸素」という共通項があります。

次に運動での乳酸の生成をみてみましょう。

運動によってできる
『乳酸』

ヒトが運動をしているとき、筋肉はエネルギーを作るために、筋肉に蓄えていた糖、グリコーゲンを分解して乳酸を作ります。
激しい運動の後に乳酸がたくさんできることから、以前は乳酸が疲れの原因と考えられていました。
しかし最近では、疲れの原因は乳酸ではなく、乳酸が作られる過程で発生する水素イオンなどが筋肉のpHバランスを酸性にしてしまうことだと考えられています。研究が進む中で、むしろ、乳酸には有益な効果があることがわかってきました。

細胞のエネルギー源
にもなる乳酸

運動ではその強度が一定レベルを超えると酸素を使わずに糖を分解して、エネルギーを生成する無酸素運動を行いますが、この時、副産物として乳酸が生成されます。

無酸素運動で増える乳酸は、実は血液を通して移動し、他の細胞に取り込まれ、有酸素運動のエネルギー源となって再利用されていることがカリフォルニア大学のジョージ・ブルックス博士によって発見されました。これを『乳酸シャトル』と呼びます。

「乳酸シャトル」概念図

それ以外にも、脳の中で神経細胞(ニューロン)をサポートする役割を持つ細胞が乳酸を作り、これが神経細胞のエネルギーとなっています。
また、脳やさまざまな臓器に好影響を与える筋肉(骨格筋)から分泌される成分はマイオカインと呼ばれ、近年注目されていますが、乳酸もその一種として、脳の神経細胞などを活性化する可能性があることがわかっています。同様に免疫細胞の代謝に影響を与えて炎症を緩和することに関する研究もあり、乳酸についてはさまざまな研究が進められています。

「乳酸はからだの各機能を活性化します。」概念図