
健康管理の
マイコプラズマ肺炎とは?
マイコプラズマ肺炎は、肺炎マイコプラズマという病原体に感染することによって起こる呼吸器感染症です。症状は比較的軽いことが多いのですが、感染力が高く、悪化すると肺炎や気管支炎、その他の合併症を引き起こす可能性があります。マイコプラズマ肺炎の疑いがある場合は、自己判断を避け、医療機関を受診してください。 特に発熱や咳などの症状が続く場合、適切な診断と治療が必要です。
- 監修
- AISANクリニック 内科専門医/愛知医科大学循環器内科客員教授 中野雄介 先生
マイコプラズマ肺炎の
原因は細菌?ウイルス?
マイコプラズマ肺炎を引き起こす「肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)」はウイルスではなく細菌に分類される微生物です。しかし、通常の細菌とは違って細胞壁を持たない特殊な構造をしているため、細胞壁の合成を阻害するタイプの抗生物質は効果がないという特徴があります。

肺炎の種類
肺炎は主に「細菌性肺炎」「ウイルス性肺炎」「非定型肺炎」の3種類に分けられます。
細菌性肺炎は肺炎球菌などの細菌によって起こる肺炎であり、湿った咳と黄色や緑色の痰が出ることが特徴です。
ウイルス性肺炎はインフルエンザや麻疹ウイルスなどのウイルスによって起こる肺炎で、一般的な風邪のような症状に加え、高熱や倦怠感、激しい咳が特徴です。
非定型肺炎とはマイコプラズマやクラミジア、レジオネラ菌など通常の細菌とは異なる微生物が原因となる肺炎のことです。乾いた咳が続き、痰は少なめという特徴があります。
ちなみに、マイコプラズマ肺炎は非定型肺炎に分類される肺炎です。
マイコプラズマ肺炎の
症状と合併症
マイコプラズマ肺炎の主な症状は、発熱や頑固な咳、倦怠感、喉の痛みです。まれに発疹が出ることもあります。感染してから発症するまで2〜3週間ほどかかり、熱が下がっても咳が3〜4週間続きます。
マイコプラズマ肺炎に感染しやすいのは5〜14歳の子どもが中心で、若い世代がかかりやすい病気です。
インフルエンザほど感染力は強くありませんが、潜伏期間が長く、比較的軽症であることから、罹患した人が出歩いて感染を広げてしまう傾向があります。そのため「歩く肺炎」とも呼ばれます。
多くの場合はマイコプラズマに感染しても、肺炎まではいかずに気管支炎となり軽症ですむのですが、肺炎になり重篤化する場合もあるため注意が必要です。また中耳炎、胸膜炎、心筋炎、髄膜炎などの合併症を併発するケースも5%〜10%ほどあると言われています。
マイコプラズマ肺炎に
かかりやすい時期と
感染経路
マイコプラズマ肺炎は秋から冬にかけて感染が多く報告される病気です。飛沫感染や接触感染によって広がるため、家庭や学校などで感染するケースが多いようです。
そのため、濃厚接触やタオルなどの共用を避けて手洗いやうがいを徹底し、マスクの着用など咳エチケットを守ることが感染予防につながります。
マイコプラズマ肺炎に
なってしまったら
マイコプラズマ肺炎かも?と思う症状が見られた場合は、まずは医療機関で検査や診断を受けてください。多くの場合は軽症ですむ病気ではありますが、重篤化するケースもあるため、自己判断は禁物です。
病院でマイコプラズマ肺炎にかかっていると診断されたら、医師の処方した薬を規定通り服用し、水分を意識的に摂取して安静を保つようにしましょう。
マイコプラズマ肺炎にはワクチンはなく、特別な予防法はありません。予防には手洗いを徹底することが重要ですが、感染してしまった場合には抗菌薬による化学療法で治療が可能です。
原因菌である肺炎マイコプラズマにはペニシリン系の抗菌薬は効きませんが、効果のあるマクロライド系やテトラサイクリン系、ニューキノロン系などの抗菌薬が用いられます。
登校や出社は
いつしていいの?
マイコプラズマ肺炎は、感染症法上では 5 類感染症と定められていて、学校保健安全法では第三種学校伝染病に指定されている病気です。そのため、急性期は出席停止となります。ただし、明確な出席停止期間は定められていないので、症状が軽快すれば登校は可能です。
出社に関しても、マイコプラズマ肺炎に関する出勤停止の規定は特にありませんが、発症してから1週間は感染力が強い状態なのでテレワークなどを活用して他人との接触を避けるようにしましょう。また、発症してから4〜6週間ほどは病原菌が排出される病気ですので、症状が緩和した後もマスク着用や手洗いなどの感染予防に努めるべきでしょう。
妊娠とマイコプラズマ
妊婦がマイコプラズマ肺炎に感染しても、気道や肺に感染する病気なので、胎盤を介して胎児に影響を与えることは少ないと言われています。妊娠の時期に応じて治療法を選択する必要があるため、妊娠中に感染が疑われる場合は医療機関に相談しましょう。