
健康管理の
手足口病とは?
手足口病は、子どもを中心に、夏に流行することが多いウイルスによる感染症で、症状としては主に手や足、口の中に発疹や水疱が現れます。発症後は発熱やのどの痛み、食欲低下などが見られることもあります。手足口病の疑いがある場合は、自己判断をせず、必ず医師の診察を受けてください。
- 監修
- AISANクリニック 医学博士・皮膚科専門医 中野章希 先生
手足口病の原因となる
ウイルスの種類
手足口病の原因となるウイルスには、エンテロウイルス属のコクサッキーA16ウイルス、エンテロウイルス71、コクサッキーA6、コクサッキーA4・A10などのウイルスがあります。エンテロウイルスとは腸管で増殖するウイルスの総称です。
なりやすい時期と
感染経路
手足口病は夏から初秋にかけて流行しやすい傾向にあり、感染経路には「飛沫感染」「接触感染」「ウイルスが口に入ることによる感染(糞口感染)」の3つがあります。
- 飛沫感染
くしゃみや咳で空気中に拡散したウイルスが目や鼻の粘膜に付着しておこる感染。 - 接触感染
皮膚や粘膜に直接接触しておこる感染や、ウイルスが付着した手や、玩具やタオルなどの物を介した間接的な接触による感染。 - ウイルスが口に入ることによる感染
(糞口感染)
排泄されたウイルスで汚染された食物や、感染者の手指を介して口に入ることでおこる感染。
手足口病は、症状がおさまっても便中から2〜4週間と長期にウイルスが排泄される特徴があり、注意が必要です。
また、幼い子どもは衛生観念がまだ発達しておらず、密に接触するため、保育園や幼稚園などでは集団感染が発生しやすい傾向にあります。乳幼児は手足口病のウイルスへの免疫がまだないことも多いため、感染することが多いのです。
手足口病の
症状と合併症
手足口病の主な症状は「発疹や水疱」「発熱」「のどの痛み」です。手のひらや足裏、ひじやひざ、口内などに発疹ができ、発熱することもあります。また、口内の発疹やのどの痛みによって食事がしづらくなることも。高熱が続くことはあまりなく、発熱は38度以下でおさまることが多いようです。
ほとんどは3日〜1週間程度で直りますが、髄膜炎や小脳失調症、脳炎などの中枢神経系の合併症や、心筋炎、神経原性肺水腫、急性弛緩性麻痺といった重い合併症を伴うことがまれにあります。また、手足口病の典型的な症状はみられずに重症化することもあります。
エンテロウイルス71が原因である場合は、他のウイルスよりも髄膜炎など中枢神経系の合併症を引き起こす割合が高いため、注意が必要です。

手足口病と似た病気
手足口病と同じく、エンテロウイルス属のウイルスが原因となる感染症に「ヘルパンギーナ」があります。
手足口病が手足にも発疹が出るのに対し、ヘルパンギーナは主に口だけに症状が出ます。また、ヘルパンギーナの方が手足口病よりも高熱が出やすい傾向にあります。どちらも同じウイルスなので、ヘルパンギーナも手足口病と同じく重篤な合併症を引き起こすことがあります。
手足口病に
なってしまったら?
手足口病かも?と思う症状が出たら、まず医師の診察を受けるようにしてください。手足口病には残念ながら特別な治療法はなく、症状ごとに対症療法を行いますが、合併症が起こることもあるため、経過観察をしっかりと行うことが重要です。
高熱が出たり、発熱が続いたり、嘔吐や頭痛などの症状が出た場合は早めに医療機関に相談し、適切な治療を受けるようにしましょう。
自宅では、水分不足にならないようこまめな水分補給と、口内の発疹への刺激が少ない薄味のやわらかい食べ物を摂るようにすると良いでしょう。
手足口病の予防法は?
ワクチンはあるの?
手足口病にはワクチンや予防薬はありません。一般的な感染対策として、石けんを使った手洗いをしっかりと行うようにしましょう。また、他人が使ったタオルから感染することもあるため、タオルの共用は避けましょう。
手足口病は治った後も2~4週間便の中にウイルスが排泄されるため、おむつなど排泄物の処理にも気をつけましょう。
手足口病のウイルスにはアルコール消毒が効きにくく、次亜塩素酸ナトリウムを水で0.02%〜0.1%に薄めた消毒液が有効です。家庭用の漂白剤を薄めることで消毒液を作ることができますが、必ず換気を行い、拭き終わった後にはしっかり水拭きをしましょう。また次亜塩素酸ナトリウム消毒液は、金属が腐食する可能性もあるため注意が必要です。

大人の手足口病
手足口病は子どもが感染することが多い病気ですが、大人にも感染することがあります。幼稚園などで子どもが感染し、それが親にうつってしまう、というのがよくあるケースです。
大人が感染すると発熱や痛みが子どもより重くなる傾向があるようです。
登校や登園、
出勤に影響はある?
手足口病は法律によって出席停止の期間が定められている病気ではありませんが、厚生労働省の「保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)」には以下の記載があります。
罹患した場合の登園のめやすは、「発熱や口腔内の水疱・潰瘍の影響がなく、普段の食事がとれること」である(中略)発熱やのどの痛み、下痢がみられる場合や食べ物が食べられない場合には登園を控えてもらい、本人の全身状態が安定してから登園を再開してもらう。ただし、登園を再開した後も、排便後やおむつ交換後の手洗いを徹底する。
- "保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)". 厚生労働省, 2018, 56p,
https://www.mhlw.go.jp/content/001005138.pdf (2024.11.16参照).
幼稚園や保育園によっては独自の登園禁止期間を設けていることもあるため、通っている施設に確認してみると良いでしょう。